酷くない?


「ーー名前まじでウケる」
「…ねぇ、一応初対面だよね?別にいいけど」
「いいんだ。これからはさぁ、ちゃんと硝子に診て貰いなよね」
「はぁ…こんな怪我くらい大丈夫なのに」
「名前馬鹿でしょ。何の為に私がいると思ってんの。てかそれ普通に大怪我だから」
「硝子って意外と優しいんだね?」
「おい、意外とってなに。五条と夏油に比べたら優しすぎるくらいだろ」
「サラッとディスんのやめて」


任務を終えて高専に戻って来たら例の女も丁度車を降りるところだった。
あの傑が一目惚れしたらしい女に興味が湧かないわけがないよね。
普通に話しかけようとしたらスーツの袖が片方だけズタズタで血塗れな事に気が付いて思わず腕を掴んでいた。

『えっ、……ちょっとなに?』
『何って、こっちの台詞。怪我してるの?』
『ちょっ!引っ張らないで!くっ付けたばっかなんだよ!』
『は??』

喚く名前をそのまま引っ張って硝子のところに連れて行った。
聞けば久々の領域展開でちょっと失敗をしたらしい。千切れそうなくらい深い傷を構築でくっ付けて止血したから大丈夫って、頭大丈夫?ちょっと失敗レベルじゃなくない?
確かに傷跡も残っていないけど、それは表面だけで中はまだくっついてないから引っ張るな、と言った。
痛覚イカれてんの?まじウケる。
傑はどこに惹かれたのだろうか。顔面?
金髪に金の瞳。まぁ整ってはいるけど、僕の顔見慣れてる傑がそれだけで落ちるとは思えない。僕の顔が良いのは自他共に認められている一般常識だからね。

「てか硝子は会った事あったんだ?」
「夏油に紹介された。何かあったら頼むよってなー」
「本人が頼む気ないじゃん」
「いや、流石に私も死にそうになったら頼むよ」

死にそうの程度が分からない。
今回の傷だって普通に出血量と傷の深さ考えると死にそうに当てはまると思うんだけど。
すんなりと一級術師に戻った名前は思った通りに強い。けど今日話しただけでも、なんか昔の傑を見ているようで危なっかしい印象を受けた。んー表情が読めないからかな。
しかも彼女の構築は特殊だ。
これ誰が教えたんだろう?
担任は学長だったっけ。こんな人材が辞めるのよく許したよね。

「硝子ありがとね」
「いいよ。次は名前の奢りな」
「…え?二人ってそんな仲良いの?」
「飲みくらい行くでしょ。硝子はザルだから金掛かるけど」
「名前に言われたくないよ。高級店ばっか予約すんのそっちじゃん」

ケラケラと笑い合っている二人が飲みに行ったのは一度だけじゃないらしい。
僕は今日初めて名前に会ったんだけど?
え?ていうか僕には紹介とかされてないよね。
あー…そう、成る程ね。
傑まじじゃん。僕に取られるとか思ったんだ?親友の事でまだ知らない一面があるとはねぇ?
僕の親友はどうやら嫉妬深いらしい。

「遅くなったけど、僕は五条悟だよ。よろしくね」
「悟よろしく。話は傑に聞いてるよ」
「え?なんて?」
「六眼と無下限呪術。五条家当主」
「…そ、それだけ?」
「ん?そうだけど、なに?」
「…硝子…傑酷くない?僕親友だよね?」
「へぇ、親友なんだ。君らの代って仲良しなんだね」
「ちょっと、クズ共と一括りにするのやめてよ」
「クズ?あ、私報告書纏めなきゃだった!硝子今度お礼するよ。またねー」

ヒラヒラと手を振って何事もなかったかのように去って行った。
ていうか治療されて当たり前なのにお礼って何なの。無駄に律儀過ぎない?

「五条会った事なかったんだな」
「本当酷くない?傑が好きな女に僕が手出す訳ないじゃん」
「そう?私が男だったら名前に惚れてるけどなー」
「…そんないい女だった?」
「んー何ていうかギャップが凄い。それにアイツいちいち綺麗っていうか艶っぽいっていうか…なんか色々狡い奴だよ」
「へぇ?」

硝子がここまで人を褒めるのは珍しいから本当なんだろうけど、僕はそうは思わなかったなぁ。最初に危ういなって思ってしまったからだろうか。
やっぱりどこか傑に似ている気がする。
名前が高専を辞めたのには何かありそうだなぁと考えながらも赤面した傑を思い出した。
思わず口元が緩む。
あんな顔出来るなんて親友の僕でもまだ知らない一面が沢山あるんだなぁ。

「傑が楽しそうで何よりだね」
「五条が一番楽しんでる気がするのは気のせいか?」


  
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