両片思い


名前もそういう事するんだ。
へぇ。と思わず小さく口から漏れて白い息が夜空に上がって消えた。


特定の部屋で行方不明者が出るとラブホテルからの依頼で深夜に祓除を行った帰りだった。
隣のホテルから出てきたのは同期の名前だった。

「またお願いしてもいいかな」
「勿論いいけど、俺はやっぱり付き合いたいかな」
「……ごめん」
「そっかぁ。ま、理解した上で好きだって事だけ覚えておいてよ。また辛くなったら頼って。じゃあまたね」

身長の高い黒髪の男は名前の頭を愛おしそうに撫でて去って行った。
暫くその背中を見つめていた名前はくるりと此方を向いた。

「あ……傑…」
「ちょうどそこで任務だったんだよ」
「あぁ、任務か。確かにいたね。お疲れ様」
「お疲れ様。名前は…デートかい?」
「いや、…うん、そう。デート」

口元だけで笑った名前はタクシーで帰るけど一緒に乗る?と提案してくれて眠かった私はその誘いにのった。
名前は詮索されたくないのかタクシーに乗るなり窓側にもたれて目を瞑った。
盗み聞きするつもりは無かったが聞こえてしまった会話が頭から離れない。
付き合ってはなさそうだったのにデートだと言ったのは何故なんだろう。

知らない香りがする名前の寝顔を眺める。
高専に入ってから伸ばされていた綺麗な金髪はバッサリと顎のラインで切り揃えられていた。先月くらいに手入れが面倒で切ったと言っていたっけ。
耳に掛けられた前髪から覗く横顔が綺麗だ。
丸い額にスッとした鼻筋。薄い唇。
髪を切ってからより中性的に見える。
身長も高くスラッとしていて少し口も悪い彼女はよく男に間違えられる事があった。
否定するのも面倒だと最近では制服のスカートをやめた。
そんな名前にセフレのような関係の男がいた事に驚いている。

それにしても辛くなったら頼ってって名前は何を悩んでいるんだろう。

先日、悟と私は言葉の通りの災害級の喧嘩をした。
それをぼんやりと眺めていた名前は『別に嫌いなものは嫌いでいいだろ。好きなものだけ大切にしたらいい』とだけ私に言った。
好きな物だけ。
私の好きな物、守りたい物。
私はその言葉に少なからず救われた。
こうやってとことん言い合って殴り合って、笑い合える親友がいる事。帰る場所だと思わせてくれる仲間がいる事。私がいないと寂しいと言ってくれる後輩がいる事。
それが守れるなら猿なんてどうでもいいかと思わせてくれた。
猿は嫌いだけど、私は此処で生きていく覚悟ができた。辛い、助けてって悟に頼る事ができた。

なのに名前は私達ではなくあんな猿に助けを求めていたことが驚きで、何故か腹立たしかった。

タクシーを降りて長い石段を無言のまま二人で登る。

「…さっきの、彼氏?」
「いや、普通に友達」
「そう…なんだ。」

会話終了。
名前はもともと口数の多いタイプではないけどいつにも増して静かだった。

「なんか、うん。意外だね」
「そう?ていうか私の事そこまで知らないだろ」

確かに、知らないかもしれない。
同期で昇級も期待されている一級術師。
細身なのによく食べる。
朝が弱く当たり前のように遅刻する。
感情的にならずいつも中立で私達の事を見てくれる大人びた女の子。
私が知っているのはこれくらいか。
それにこんな情報は七海や灰原すら知っている事だから胸を張って言える事でもない。

名前はあまり自分の気持ちを主張する事がなかった。
どうして呪術師をしているのかすら知らないのだから、セフレがいるだとか彼氏がいるだとか知らなくて当たり前なんだけど、何故か心が落ち着かない。

「……興味もないんだな」
「え?今、なんて、」
「タクシー代ありがと」
「あ、いや、任務帰りだし経費で落ちるからお礼を言われる事はしてないよ」
「タイミング良かったわ。ならまた明日」

長い足でさっさと寮に向かって行ってしまった。
タイミングで言うなら最悪だったんじゃないかい?
同期に見られたくなかっただろう?
いや、彼女の言う通り私は何も知らないんだ。
実は私と悟のように硝子に屑と呼ばれるタイプなのかもしれないしね。
性欲処理だと割り切って気持ちが無くても抱けるのなら別に見られたって何とも思わないだろう。まぁ、それは私の場合、だけど。
ただタクシー代が浮いてラッキーとしか思ってないかも知れない。
任務中あれだけ眠くて仕方なかったのにさっぱり冴えてしまった頭をどうしようか苦笑いしながら私も寮に向かった。



「硝子は名前に彼氏がいるとか聞いた事あるのかい?」
「急に何?」
「んー彼女の事知らないなって思ったんだよね」
「ふぅん?彼氏はいないよ」
「そうなんだね」
「モテるのに断りまくってるんだよなー」

そんなにモテるんだ。
まぁ、確かに綺麗な顔立ちはしていた。
まじまじと顔を見るのなんて初めてで知らなかったけど先日の寝顔なんて本当に綺麗だった。
知らないのも知ろうとしなかったからか。

「硝子から見て名前ってどんな人なんだい?」
「んー…素直で可愛い、かな」

素直で可愛い……?
両方とも名前とは遠いところにあるような気がするのだけど。
いや、可愛いくないって言っている訳ではなくて、彼女はクールビューティーの言葉の方が似合う。
私と悟には見せない顔があるのだろうか?

「てか、ホントなに?名前に恋でもしたの」
「は……?恋?」
「今まで興味すらなかったのに急に気になるなんておかしいじゃん」
「いやいや、私が?……救って貰っておいて何も知らないのに気付いただけだよ」

ふぅん?と再び疑るような目線を向けられた。

「おはよ。……なに、取り込み中?」
「名前おは。てかもう昼なんだけど」
「昼?硝子お昼まだなら食堂行こ」
「育ち盛りかよ」
「あ、身長伸びてた」
「まじ?ウケる」

ケラケラと笑いながら硝子はチラッと私を見てから教室を出て行った。
名前はいつも通り気怠げで眠たげな表情で笑ってはいなかったけど、硝子のあの勝ち誇ったような顔は何なんだったんだか。

「傑?んだよ、また何か悩んでんの?」
「あぁ、悟お疲れ様。早かったね」
「早朝からとかまじでやめて欲しいよな。送迎付きじゃなかったらキレてるわ」

もうキレてるだろと軽口を叩きながら任務の感想を聞いていた。
私達は何でも話す様になった。
どんな小さな事だってお互い気が済むまで話をする事にしたんだ。

「で、次は傑の番な。何かあった?」
「んー、硝子と名前には言わないでくれよ」
「へえ?別に言わねえけど珍しくない?」

私はあの夜に見た事を話した。

「んー、人のもんだと思ったら気になったって事?」
「は?悟も硝子も何なんだい?」
「いやさぁ、俺も名前が男といたりとか?見た事あるけど別に何も思わなかったな。傑が気になるって恋でもしたのかって普通に思うじゃん」
「え?悟、知ってたんだ?」
「まー俺程じゃねぇけど、アイツもモテるしな」

何故私だけ知らなかったんだろうか。
それが腹立たしいというか、切ない?というか。よく分からない気持ちで心が落ち着かない。ここ数日モヤモヤして仕方ないんだ。

「名前はさ、私が欲しい言葉をくれたんだよ。それなのに私は何も知らなかった。だから気になるって変かい?」
「別に変ではねーけど。中途半端に興味持つならやめとけよ。アイツ諦めようとしてんだろうし」

同期に興味を持って何が悪いんだ。
ん?今、なんて。

「…諦める?」
「あ、いや…何でもねぇよ」
「いやいや、流石に何でもないじゃ納得しないよ」
「あーもう…ホント言うなよ?殺される」
「は?名前に?」
「てか気付かないオマエもオマエだよ。名前はずっと傑の事が好きだったんだよ。見てたら分かんだろ」

は………?すき?
好きって、あの好き?
諦めるって事は恋愛的な意味でって事だよね?
嘘だろ。名前が私の事を?

「髪伸ばしてたのも太ろうとしてたのも、クールっぽく見せてんのも傑のタイプになりたかったからじゃん」

私のタイプ?そういえば…
前に四人でした会話を思い出した。

『傑、また彼女変わった?』
『あぁ、名前見てたんだ?別に彼女じゃないよ』
『傑は誰でもいいもんなぁー』
『五月蝿いよ悟。私だって選んでる』
『はあ?髪長くて胸でっかくて色っぽい奴なら誰でもいいんじゃん』
『んー…まぁ、そうかも?いや、顔も大事だろ。あ、あと煩くないのがいいね』
『クズ。死ね』
『クズは認めるけど、死ねは酷くないかい?』


確かに私はそう言った。
私の為に髪を伸ばして、私の好みになろうとしていたの?
私は特定の彼女とやらは作らなかったけど、それなりに遊んで来た。
それを横で見ながら名前はずっと私の事を思ってくれていたのか?
自分でも屑だと自覚がある私の事を?
それって……凄くーー。

「…かわいい」
「はあ?!傑、本気じゃないならまじでやめとけよ。あんな綺麗な髪を切った名前の気持ち考えろよな」
「あ…そうだったね、もう好きじゃないかもしれないよね」
「いや、そこじゃないんですけど」
「悟、食堂行かないかい?」
「人の話聞けよ」

ちゃんと考えろよ。まじで。と何度も釘を刺す悟を連れて食堂に向かう。
今更なのかもしれないけど、私はどうやら名前の事が好きらしい。
人の物になってから気付くなんて遅すぎるかもしれないけど、いつも側で私達を見守ってくれる名前に私はいつも癒されていたんだ。
今までよく無関心でいれたなと思うくらいにもっと知りたくて、もっと近くにいて欲しい。これが本気とやらでなければ何が恋だというのか。

「ーーもう食べないのか?」
「うん。もう辞めた。縦ばっか大っきくなる」
「ハハ、175くらい?」
「それくらいあるかも」
「いいじゃん。綺麗だよ」

入り口で二人の会話が聞こえて来て足を止めた。髪も切って、太りたいのもやめたとなると名前が諦めようとしてるというのは本当なんだな。
振り回してしまう事になるけど、もう一度私の事を見てくれないだろうか。
名前は硝子がスプーンで差し出したオムライスを口に入れた。

「ん、うまい。……私家継ぐことにしたからあんま会えなくなる」
「……は?高専は?」
「それも辞める。ウチも一応名家って言われてるくらい無駄にデカいからさ、忙しいんだ」
「そっか…無理すんなよ」
「ありがと。硝子はずっと友達だよ」
「親友でしょ?」
「ふふ、そうだな。私これから男として生きるんだけど、どう?嫁に来る?」
「ふ、ハハッ!いいね、給料3ヶ月分の指輪期待してるわ」

聞こえてきた情報の多さと内容に足が動かなかった。
悟に腕を引かれ食堂から出て寮の方に向かっているらしい。
あぁ、ホントに今更だったんだ。
よく考えろって、確かにその通りだ。

「傑大丈夫か?…さっきの話は俺も知らなかったわ」
「私の、所為だろうね」
「…それは違うだろ。そんなんで苗字の当主が務まるかよ。まぁ、遅すぎるかもだけど気持ち伝えるくらいはいいんじゃね?」
「そう、かな。……苗字ってどんな家門なんだい?」
「んー対人専門って感じ?名前が男として生きて行くってのはまぁ、安全の為だろうな」

あぁ、前にもそんな話をしていたか。
呪詛師を初めて殺した時、名前は顔色ひとつ変えなかった。何度も教育されているから慣れてるし大丈夫だと心配する硝子に話していたっけ。
私は名前に興味すらなかった。
同期として側にいるのが当たり前だと思っていたんだろう。
だから知ろうともせず聞く事もしなかったから名前も私に直接話した事はない。
あの時少しでも関心を持って向き合っていたら今も隣に居てくれただろうか。
高専辞めるんだって私にも直接話してくれただろうか。




「名前おはよう」
「はよ。傑ひとり?珍しいな」
「あ、二人は別で任務行ったよ」
「そっか。まだ寝てれば良かったわ」

席に着いた名前は今日も相変わらず昼過ぎまで眠っていたようだ。
長い足を持て余しながら机に肘を突いた。
そのまま眠ってしまうのかと思い眺めていたら鼻先が此方を向いて思わず肩が震えた。

「なに?また何か悩みでもあんの?」
「え、…いや、大した、事じゃないよ」

じっと大きな瞳で見つめられて吸い込まれそうだななんて馬鹿な事を考えていると名前は立ち上がって私の隣の悟の席に座り直した。
ふわりと柔らかい香りが届いて息を呑んだ。
心臓が煩くて聞こえてしまうのではないかとそっと胸を押さえる。

「なんかあった?」

先程と同じ姿勢を取った名前は机ひとつぶんの距離で私を真っ直ぐに見つめていた。
その大きな瞳には私の姿がぼんやりと映っていてもう抑えきれなくて覚悟を決めた。
伝えるくらいは許してくれるかな。

「名前の事が好きなんだ」

「………………は?」

たっぷりと沈黙したあとに予想通りの答えを頂いた。

「異性として好きなんだ。だからもっと知りたい、教えて欲しいって思ったんだけど…高専辞めるんだよね?」
「あー…まぁ、すぐじゃないけど辞める、ね……その、好きってやつさ、もしかして悟か硝子から何か言われたの」
「いや、名前の事が気になるって私が話しただけだよ」
「そっか…えっと、とりあえず…ありがと」

俯いてしまって表情は見えないけど、嫌がったり逃げたりしなくて良かった。
ちゃんと聞いてくれただけでも心が満たされるなんて少し前の私じゃ想像も出来なかったよ。

「ずっとさ…傑の事、その…す、きだったんだ。もう諦めたつもりだったけど、嬉しい」

ゆっくりと顔をあげた名前は笑った。
少しだけ顔を赤く染めていた。
笑うと目が垂れるんだ。薄い唇がなだらかに上がっている。
名前のここまでの満面と言っても良いぐらいの笑顔なんて初めて見た。
愛おしくて暖かい気持ちで胸が一杯になる。

「かわいい」
「っ、あ、りがと」
「名前が想ってくれてるの知らなくて今更なのは分かってるけど、もう一度私を見てくれないかな。絶対に好きにさせてみせる。それが出来なかったら諦めるからチャンスをくれないかい?」
「……傑ってそんな人だった?」
「ふふ、名前も私の事知らないだろう?」

自分でも驚き過ぎて引いてしまうくらいに変わったんだ。
好きな人には近くにいて欲しいし触れたいだなんて自分がこんなに甘々になれるなんて初めてで戸惑うけど、嫌じゃない。
こんなに君を好きな私の事を名前は知らないよね。

「もっと名前の事も教えてくれないかな」
「……」
「お願いだ」
「あー、もう…分かったから、手離して」

思わず取ってしまっていた名前の手をパッと離した。
無意識とは恐ろしい。
触れたいと思ったら触れてしまっていたらしい。硝子に比べたら少し大きい手。でも細い指に滑らかな肌にもっと触れていたかった。

「…私さ中学の時から傑の事を好きだったんだよ。だから5年くらい?それを諦める覚悟って結構いった訳。好きって言ってくれて嬉しいけど正直今じゃない」

「なら…次タイミングが来るまで私はずっと好きでいるよ。その時はあの男じゃなくて私を選んでくれないかな」

5年?中学の時?
名前は悟と同じ中学だったと入学の日に言っていたし、どこで出会っていたんだろうか。
それにしても5年も想ってくれていた事が嬉しくて歯痒い。
タイミングが悪いのはよく分かっている。
でも一年前の私は名前ともしお付き合いしたとしても傷付ける事しか出来なかったと思うから、仕方ない。

「あの男?」
「ホテルから出てきただろう?」
「あぁ…あれは、うん…選ぶ事はないかな」
「友達だろ。何でそう言い切れるの?」
「……傑に似てたんだ。顔と声が。だからたまに会ってただけ」
「え……?」
「傑って呼んで良いって向こうも言ってくれたから別に無理矢理じゃない」

いやいや、そこじゃないんだよね。
傑って名前呼んで、私だと思って抱かれてたって事で合ってるよね?
なに、それ。
名前が素直で可愛いって硝子の言った意味がやっと分かった。
可愛さが爆発してる。
あーそんないじらしい理由であの男といたんだ?

「私が抱いてもいい?」
「…………は?なんで、そうなる」
「何かを埋めて欲しくて、心が寂しい時にそうしていたんじゃないのかい?まぁ、私がそうだっただけだけどね。またそんなどうしようもない気持ちになった時は私に頼って欲しい」
「いや、でも…」
「相手の猿。殺してしまうかもね」
「はぁー…分かった。無駄に殺さなくていい」

あぁ、嬉しいな。
あの男が死ぬ事より、殺す事を心配してくれる。そういうところが好きなんだ。
同期だし当たり前だって思っていたけど、いつも私を見てくれてありがとう。

「あ、名前来てたんだ。おはー」
「はよ」
「……え、何この空気」
「…傑に告白された」
「は……?ちょっと夏油、顔貸せ」
「私は本気だよ。名前が振り向いてくれるまで無理強いもしないから安心して」
「振り向く?…へえ?フラれたんだ。ならいいわ、勝手にすれば」
「…何で硝子がドヤ顔するんだい?」

言い合いを始めた私達を見ていた名前が吹き出す様に肩を震わせて笑った。
クツクツと堪えながらも笑っている。
柔らかく垂れた瞳が私を見た。

「ふふ、私も傑の事何も知らなかったんだな」
「名前…そんな顔見せたら…あーもう!」
「硝子?」
「まだ好きなんだろ。付き合えば」
「いや、私は諦めるって」
「そんな幸せそうに笑っといてよく言うよ」
「ハハッ、そっか。でも本当に今じゃないんだ。浮かれてる余裕も時間も無い」
「うん。私はいつまでも待つよ。出来れば支えさせてくれたら嬉しいけどね」

硝子が目を見張って私を見た。
硝子も知らなかっただろう?私が屑やめたって。
これからは名前しか見ない。見ないと言うか見れない。他はどうでもいい。
私が欲しいのは名前だけだから。

「ふぅん。ま、名前が良いならそれでいいけど。てか男になるから断ったのかと思った」
「あ、忘れてた。傑は男好きって思われるけど大丈夫?本当は男でしたって、当主に就任する時に言いふらすからさ」
「別に何でもいいよ。名前が嫌な思いしなければ何でもいい」

オマエ傑なの?と疑いの目を向けられているのに笑ってしまう。
うん。名前が笑ってくれるなら何でも良いって言うのはホント。
あと男が寄って来なくなるのが良いよね。
悟も硝子も口を揃えてモテると言い切ったから男として生きて行くのは反対しない。
女には硝子と婚約してるとでも言えばいいしね。
確かにこんな蕩けるような、甘い笑顔見せられたらモテるのも納得だった。髪が長い時に笑ったのも見てみたかったな…。
また伸ばしてくれないだろうか。
あぁ、好きだな。

「あー…もう耐えれない。硝子、食堂行こ」
「おっけー」
「私も一緒に行くよ」
「傑は…今度ね」

控えめにヒラヒラと手を振って教室から出て行った。
なに、あれ。可愛すぎて死にそう。
やばいな。あんな可愛い生き物と私よく3年も同じ空間にいたよね。
それに気付かない鈍感な私もやばいけども。
今度ね、と呟いた名前の顔は真っ赤だった。これは期待しても良さそうだね。
1年でも5年でもずっと待つから、もう私の代わりなんて探さないで。
間違いなく殺してしまうから、気をつけてね。


  
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