雨に溺れた夢


「五条先生って彼女いるのー?」

地下室での映画鑑賞という特訓中に悠仁が僕に質問を投げかけた。
ラブロマンスを見たからだろう。

「あれ?悠仁に言ってなかった?僕婚約してるよ〜」
「え!そうなの?!五条先生あんま誠実じゃないっつーか、遊んでる?イメージあった」

まぁ昔の僕はどうしようもないクズだったから間違ってはないけど。

「失礼だなぁ。僕はいつでも一途なグッドルッキングガイだよ」
「どんな人なの?」
「気になる?」
「めちゃくちゃ気になる!」

悠仁の顔に興味津々って書いてあるくらい食い付いてきた。まぁ休憩がてら丁度いいか。

「小柄で華奢で笑顔が可愛くてね〜!でも普段はっていうか僕の前以外ではクールビューティーで強くてカッコ良い女だよ」
「えー強いの?!五条先生より?」
「呪力無しの体術なら負けた事あるかな〜。見た目によらずゴリゴリの近接タイプだからねぇ」
「すげぇ!」

名前とは同期で一回負けたのが悔しくて何度も組み手してたっけ。
良い術式持ってるのに「結局大事なのはフィジカルでしょ」とか言っちゃうイカれた女の子。華奢な身体のどこからそんな力出るのってくらい力強くて、すばしっこくて、努力家で。絵に描いたようにニコって笑う彼女。

「どっちから告ったの?」
「グイグイくるね〜。そんなの勿論僕からだよ!しかもこんなグッドルッキングガイを何度もフってるんだから本当イカれてるよね」
「それはマジで意外!似合わね〜」
「僕はあの時ほんっとーに頑張ったね!ガラスのハートが何度割れそうになった事か」
「本当に一途だったんだ!で、どうやって落としたの?!」
「僕とは釣り合わないって言い張っててね〜。五条じゃなくて僕を見てって押して押して押しまくったよ」
「そんで、そんで?!」
「高専卒業してからやっとオッケーもらったかな」

あの時の僕の浮かれ様見て硝子引いてたなぁ。思い出してもニヤけちゃうくらい嬉しかった。「私、五条家の色々とか礼儀作法とか何も分からないし、務まらないと思うけど...それでも良いの?」って俯きながら顔真っ赤で本当に可愛過ぎて今死んでも良いってくらい幸せだった。
浮かれた僕はすぐに婚姻届取ってきて、「それは早すぎない?」って名前照れながら困った様に笑ってたなぁ。

「んで、いつ結婚すんの?先生の結婚式派手そう!」
「勿論!世界で一番の式にするよ!でも、まだ先。かな。」
「へぇ〜。式呼んでよ!」
「...悠二も恵も野薔薇も勿論呼ぶよ!」
「すっげぇ楽しみ!!」

返事貰えてから、すぐに同棲始めて。
迎えてくれる愛しい人がいる事も愛しい人を迎えられる事もこんなに幸せな事だと思わなかったなぁ。
名前は意外に料理が苦手だった。でも、僕の為にこっそり練習してくれてたの知ってるよ。
彼女はブラックコーヒーしか飲まないのに僕の為にあっまーいココア入れてくれたり。
名前の前ではいつもただの悟でいれた。
僕だけに向けてくれる無償の愛。あんな温もり知ってしまったからもうお前無しじゃ僕は完成しないくらい僕の心を埋めてくれた。

「で!誰なの?!高専にいる??」
「名前っていうんだけど、もう、居ないんだよね。」
「え?それってどういう...」
「任務に行ったっきり帰って来ないんだよね〜」
「あ...俺...先生ゴメン。」
「いやいや!名前の話出来て僕は嬉しいよ!みーんなアイツの話避けてるしね。」
「...」
「それに名前まだ死んだって決まってないから。」
「え?」
「遺体も血痕もなーんにもなくてさ〜呪霊と一緒に消えちゃったの。手品みたいでしょ?...さ!そろそろ次の映画行ってみよーか!!」



ねぇ。名前。
僕にあんな幸せ与えといてさ、どこにいっちゃったの?
僕ずっと探してるんだけど。
そろそろ君の香りも温もりも忘れちゃいそうなんだけど。
もし、もしもね。万が一だし有り得ないと思うけど、君がこの世に居ないなら。必ず迎えに行くから。それまで僕の事好きで忘れないでいてくれる?まぁ忘れてても絶対また好きにさせてみせる自信はあるけど。忘れられちゃったら悲しいからさ、傑と世間話でもして待っててよ。それで今度こそ結婚式挙げよう。君に内緒でとびっきりのウエディングドレス用意しちゃってるからさ。楽しみにしててよ。

名前が何処に居ようとも僕は探し出してみせるから。待ってて。



  
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