最高な伏線


今日の最高の運気は2月生まれのあなた!
気になる人からアプローチされちゃうかも?!ドキドキしますねぇ〜!
それでは良い1日をお過ごしください!

5時53分。暖かいコーヒーを飲みながらボーッとテレビを眺めていた。
占い何て何年ぶりに見ただろうか。
信じる、信じないでいえば信じない方の人種だけど、最高の運気と言われれば悪い気はしない。私は良い占いなら信じたい。
あぁ、こんなゆっくりコーヒー飲んでる場合じゃないのに。そろそろ準備しないと。

熱いシャワーを浴びて目を覚ます。
髪を乾かしている間に顔に保湿力が素晴らしい優秀なパックを貼り付ける。
アラサーになると最低限でもこれくらいしなければ。老化は始まっている。
今日の任務は〜と軽くメイクをしている間に頭の中でスケジュールを確認する。
どうせ崩れるのは分かっているけど、緩く髪を巻く。少しでも気分が上がるように毎日のルーティンになっている。
良し。ぴったり5分前。確かに今日は良い1日になりそうだ。

結果的に言うと、最高な1日だった。
任務はさくさくとスムーズに終わるし、補助監督が差し入れてくれた飲み物も今私がハマってる物でテンション上がったし、高専で野薔薇から「名前さん今日もキマってんね!」とサムズアップを頂いた。
占いも捨てたもんじゃない。

資料をまとめ終えそろそろ帰るかと高専を出た。

「名前じゃん!お疲れサマンサ〜!」
「悟、相変わらずね。お疲れ様。」

でた〜!五条悟!

「僕はいつでもグッドルッキングガイだからねぇ」
「いや、中身の話だから。」

悟といると落ち着かない。彼と向き合うと途端に自分に自信が無くなるのだ。
永遠のトラウマになるであろう出来事は高専在学中に起こった。
私は五条悟が好きだった。
態度も口も悪いが何だかんだ気遣ってくれる不器用な優しい人。
彼を少しでも支えれたらと鍛錬に励んでいた。しかし放課後の教室で聞いてしまった。

「名前、京都高のヤツに告白されたんだって〜五条知ってた?」
「...知らない。」
「へぇ。意外。てっきりリサーチ済みかと」
「...あんなチビでブスで弱っちぃの好きなヤツとかモノ好きもいるもんだな」

私は伝えてもいない恋心を土足で踏み荒らされた。勿論伝える気などこれっぽっちも無かった。不釣り合いなのは自分が1番良く分かっていた筈なのに、支えたい、隣を歩きたい、なんて烏滸がましいにも程がある。
教室の前からそっと立ち去った。
あれから身長も平均まで伸びたし1級術師になる事も出来た。メイク、髪型、服装も自分に似合う物を知った。けど彼に会うと途端に自信が無くなってしまう。

「名前?体調悪い?ダイジョーブ?」
「い、や考え事してただけ」
「そう?てっきり失恋して落ち込んでるのかと思ったよ〜」
「な!何でそれを!...硝子か...」
「ほんっとーに名前は見る目無いよねぇ。今回は浮気、その前は別れた後ストーキングされてたしね〜」
「...ちょっと。私の恋愛事情筒抜けすぎない?」

はぁ。プライバシーどこいった。

「ねぇ。名前。」
「な、何よ。お説教ならお断りだから。」
「そろそろ僕の良さに気付いても良いんじゃない?」
「は?」
「僕としてはお前が自ら気付いてくれる事を期待してたんだけど。名前があんまりにも不毛な恋愛ばっかしてるからもう待てなくなっちゃった」
「え?それって...どう、いう」
「これからお前を本気で口説くって事。」

口説く?誰が?悟が?私を?
えええ!ないない!夢?夢オチ?

「有り得ない」
「...何が?」
「悟が私を好きなんて有り得ない」
「あ"?人の気持ち知りもしねぇで勝手に否定してんじゃねぇよ。」
「...知ってるよ!硝子と話してるの聞いちゃったの。チビでブスで弱いって!そんなモノ好きいるんだって!」
「...お前。何年前の話ししてんの。」

悟がこちらに歩み寄りふわりと抱き締めた。

「あの時の僕は思春期真っ只中で、素直になれなかった。硝子に告白されたって聞いた時お前が他の人の物になると思ったら嫉妬で頭おかしくなるかと思った」
「...」
「てゆうか!そこだけ聞いてるとか何でだよ。その後も聞いとけよ。」


『中身小学生かよ。そんなんじゃ名前に嫌われるぞ』
『うるせー。...可愛いすぎていつも何て言っていいか分かんねぇんだよ』
『ハハッ!小学生以下じゃん。ウケる!ま〜安心しなよ、名前興味無さそうだったから』
『それ先に言えよ!』


「...うそ」
「ホント。あの頃からずーっと僕は名前の事が好きだよ。思っても無い事言って傷つけてごめんね。これから一生掛けて償うから、許してくれないかな?」

悟はそう言いながら私の目尻を指で優しく拭う。
何だ。私が1人で何年も悩んでたのバカみたいじゃないか。ちょっとだけ悔しくて、悲しくて、嬉しくて涙がぼろぼろと溢れる。

「わ、たし。さと、るの隣にいて、いいの」
「名前が良いの。僕がどんだけお前の事好きだと思ってるの。10年だよ?お前じゃなきゃ駄目なんだよ」

見上げると、サングラスは気付いたら外されていて、悟の瞳が私を優しく見つめている。
なに。そんな顔見たこと無い。

「悟...耳真っ赤」
「はぁ〜。当たり前でしょ。好きな子初めて抱き締めてるんだから、緊張しない訳ない」

こんな筈じゃ無かったとかお前が勘違いしてる所為だとかクソダサいとかぶつぶつ言いながらぎゅっと抱き締められた。

「はぁぁぁ。何なのお前。あの時、僕の事好きだったの?マジで昔の俺殴ってやりてぇ」
「...ふふっ!口調。態度も口も悪い悟も好きだったよ」
「やっと笑った。名前はどんな顔してても可愛いけど、やっぱり笑った顔が好き」

涙は止まったがぶわっと顔が赤くなる。

「名前僕と付き合ってよ」
「...うん」

今日は悟の見た事のない顔ばっかりだ。
壊れ物を扱うかの様に顔にそっと手が触れる。それは少し震えている気がした。
目を瞑れば唇に柔らかな感触。
力強くでも優しく悟に抱き締めらながらトラウマがするすると溶けていく感じがした。


「とりあえず一緒に住もう」
「それは、早すぎない?」
「僕がどんだけ待ったと思ってるの。もう待てない」

こんなにも、ぷくっと頬を膨らませるのが似合うアラサーは悟くらいだと思う。
不器用で優しい人。
これから一生掛けて償ってもらうんだから。



  
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