その笑顔はどんな花より美しくて 02.
花が好きだった私は中学に入学して美化委員会に入った
毎日、朝と帰りに花壇に水をやるのが私の日課
はじめの頃は水をやるのにも一苦労
でも今では慣れた
そしてその日は帰りに職員室によったせいでいつもより花壇に行くのが遅くなってしまった。
走って花壇までいくと
そこには綺麗な顔立ちの男の人がいた
それは何度も何度も見続けてきた人だった
ドクンッ
自分の胸が熱くなり
鼓動がはやくなったのがわかった
「どうしたの?」
彼を見て固まっていた私に彼は優しく声をかけてきた
『あ、あの……花に水をあげにきました…』
「花に水?……あぁ君、美化委員の子?」
『はい。二年の名前って言います』
「名前さんね。よろしく俺は幸村精市、好きに読んでくれて構わないよ」
幸村先輩は優しく微笑んだ
その微笑みは男だと思わせないほど綺麗だった
「名前さんは…花が好きなの?」
『は、はい…何か見てると安心するんです』
突然彼から聞かれた言葉に私は戸惑いながら答えた
「安心か…俺はどっちかというと悲しくなるかな」
『…悲しくですか』
「うん…こんなに美しく咲いている花も何日かたてば散ってしまう…それを見てると大切なものも失いそうな気がしてね…」
先輩の悲しげな表情を見ると胸が締め付けられた
しばらく幸村先輩と話した
嬉しかった
憧れてた先輩と
ただ見てるだけだった先輩と
今こうして話していることが嬉しかった
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