私とハーマイオニーは寮へ戻り荷物を持ってから変身術の教室へ向かった。

変身術の教室は広く、横長の机がいくつも並べられていた。

私はハーマイオニーに連れられて一番前の席に腰を下ろした。

やがて教室に生徒達が入ってきた。

今日はスリザリンとの合同のようで、ドラコは二人のがっちりした体格の男子生徒を連れて得意顔で入ってきた。

ふと目が合うとドラコはぱっと顔を輝かせたが、隣にハーマイオニーがいるのを見て不機嫌になったようだった。

私は席に座りながら、変身術の厚い教科書をぱらぱらと捲る。

ハーマイオニーが変身術の興味深さを語っているのを、マクゴナガル先生は誇り高げに聞いていた。

ナギニは特に教科には興味がないようで、私が見つめている教科書に顔を乗せてきた。

しばらく経つと一限目が始まることを告げるベルが鳴った。

しかしハリーとロンはまだ教室に入ってきていなかった。



「ハーマイオニー…2人、どうしたんだろう。」

「知らないわ。何があろうと、授業に遅れるあの2人が悪いのよ。」



ハーマイオニーは冷たい声でそう言った。

静かな教室の中、マクゴナガル先生はその姿をトラ猫に変えてみせた。

それを見て生徒達は感嘆の声をあげ、ハーマイオニーは目をキラキラと輝かせる。

私は二人が心配で、ナギニの頭をせわしなく撫でていた。

しばらく私達は教科書の書き取りをしていた。

その間マクゴナガル先生はトラ猫の姿のまま教卓に座り、生徒を見ていた。

ふと顔をあげてその姿を見ると、マクゴナガル先生は微笑むように髭を揺らした。

すると慌ただしい足音が近づいてきて、教室の扉が大きな音をたてて開かれた。

そちらに顔を向けてみると、ハリーとロンが髪と制服を乱しながら教室に飛び込んできた。



「ロンッ、早く!」



ハリーはロンを急かすように声を張った。

ハーマイオニーは騒がしくなったその空気に眉を顰め、二人に厳しい視線を送った。

私は苦笑しながら二人を見る。

息を整えながら、ロンは教室を見回してマクゴナガル先生がいないことを確認した。

ロンはほっと胸を撫で下ろし私達の姿を見つけ、そちらに足を向けながら言った。



「間に合ったー。
遅刻したらマクゴナガルがどんな顔をするか…。」



そう息を吐いたロンの目の前で、トラ猫のマクゴナガル先生が教卓から飛び降りながら変身を解いた。

突然姿を現したマクゴナガル先生を見て二人は身を固くした。

はっと息を呑み、靴音を鳴らして近づいてくるマクゴナガル先生を呆然と見つめる。



「変身、お見事でした…。」

「お褒めの言葉をありがとう、ウィーズリー。」



ロンの言葉にマクゴナガルがそう返し、二人を真っ直ぐ見据えた。

二人は厳格なその瞳に何も言えないように目を泳がす。

二人を自業自得という瞳で見ているハーマイオニーの隣で、私はどうなるかと胸を緊張に跳ねさせた。

ふとドラコが視界に入る。ドラコはせせら笑うような嫌な笑みで二人を見ていた。



「あなたとポッターを懐中時計に変身させましょうか?
そうすれば遅刻しないでしょう。」

「ぼ、僕たち…道に迷って…。」

「では地図にしますか?」

「…。」



マクゴナガル先生の言葉に、二人はちらと顔を見合わせた。

マクゴナガル先生なら本当にやりかねないと思ったのだろう。落ち着きなさげに肩を竦めた。

マクゴナガル先生はそんな二人を見てため息を吐くように言った。



「地図なしでも席はわかりますね?」



その声に、二人は解放されたかのように席につこうと足を歩ませた。

私が小さく手招きすると、ハリーがありがとうと囁きながら席に座った。

ほっとしたように長い息を吐いた二人に、私は苦笑をこぼした。

それでもまだハリーは緊張に顔を固くしていて、ロンは息を詰まらせていた。



「はやく道、覚えなきゃね。」

「わ、わかってるよ。」



私がくすと笑いながら言えば、ロンが顔を赤くしてそっぽを向いた。

呆れたようにハーマイオニーがため息を吐くと、マクゴナガル先生が前に立ち授業が始まった。

変身術の授業はマクゴナガル先生の変身術がどのようなものであるのかの説教から始まった。

そしてマクゴナガル先生は身近にあるものの姿を自由に変えてみせる技を披露した。

机を豚に変えて姿を戻してみせると、生徒達は大歓声を上げた。

皆は早く試してみたくて堪らないような様子だったが、変身術はそう簡単にいくものではない。

まずは小さいものから始めようと皆にマッチが配られ、それを針に変える練習が始まった。

私はできるだけ人前で魔法を使いたくはないので、周りの様子ばかり見ていた。

あの白い杖を出したくないことを知ってか、ナギニはクスクス笑っていた。

マクゴナガル先生はそんな私に気づいたが、追及せずにいてくれた。

結局マッチ棒を針に変えることができたのはハーマイオニーだけだった。

マクゴナガル先生はハーマイオニーの変身術がどれほど精密で精巧で素晴らしいかを皆に語った。

ハーマイオニーは誇らしげで、マクゴナガル先生が微笑んだので嬉しそうだった。

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