ザアザアと音を立てながら雨が降っている。

何時間も降っている雨は、湿った地面をさらに濡らしていく。

そんな中、一匹の子猫が小さな公園の茂みの中で呟くように小さな声を漏らした。



「…にゃぁ…。」



さむ、い…。



バケツをひっくり返したかのような雨が降っている中で、そんなことを呟いた。

体を丸め、冷えきった自身を何とか温めようとする。

その猫は元々、飼われていた猫だ。

けれど…捨てられてしまった。

まだ小さなその子猫は、何が起きているのか分からないまま家を追い出されたのだ。

そしてどこに行くのかも分からず歩き、この公園に着いた。

毛は雨を吸って濡れているので体が重く感じる。

けれど、人間に会いたい。

撫でてほしい。

話しかけてほしい。

子猫は誰もが見て見ぬふりをする中、必死に鳴いた。



「にゃっ、にゃぁ…!」



こっちを見てっ!

気づいて・・・!



けれど…土砂降りの雨の中で、茂みに隠れている子猫の鳴き声に誰が気づくだろう。

…誰も、気づかなかった。

公園の前を通る車も、人も、空を飛ぶ鳥でさえも、彼女に関心すら持たない。

世界から、…突き放された気がした。

自分の存在が分からなくなった。

凍えてうまく力が入らずよろける足で、茂みから出ていく。

また、雨に打たれた。

けれど気にならない、…気づいてもらえるのなら。

公園の敷地から出た子猫の前に、上等な革靴を履いた足が止まった。

足の大きさからして、男性だろうか。



「これは…、可哀想に。」



テノールの心地いい声が耳に届いた。

濡れている頭を撫でられ、泥がついてしまうのを厭わずに抱き上げられる。



「…にゃん…!」



アナタは…?



久しぶりに感じた温もりに喉を鳴らせながら言った。

するとその男性はクスッと笑って喉を撫でてくる。

気持ちよくて、目を細めると優しい声が返ってきた。



「…君は、もう幸せになるべきだよ。
だから今は、安心して寝なさい。」



"私が連れてってあげるから"

どこに…?

そう言おうとしたけれど、急に襲ってきた眠気に口が開けなかった。

最後に見たのは、その男性の優しい微笑みだった。

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