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「…あ。」


登校時間五分前に学校へ着いた俺は、教室に入った瞬間気付いてしまった。

一限目は体育。

だから当たり前のようにクラスメート達は体操服に着替えている訳で…

しまったと思った。


体操服を忘れた。






俺は鞄を机に置くと急いで隣のクラス、一組へ行った。

教室の入り口で目をキョロキョロさせ、一番仲の良い池内敦(いけうちあつし)を探す。

あ見つけた、と思ったら肝心の池内は背を向けていて俺に気付かない。

代わりに池内の視線の先に居る野口康喜(のぐちやすき)と目が合った。


「あ。あいちゃんだ。」


野口は口角を上げてクールに笑い、俺に手を振ってくる。

それに対し俺も笑って手を振りながら2人に近付いていった。


「おぉ、マナトおはー、」

「おはよー、」


ようやく気が付いたらしい、池内が振り向いた。







俺の名前は谷本愛斗(たにもとまなと)。

読み方はマナトなんだけど、野口は何故か「あいちゃん」なんてふざけた呼び方をする。

そんな呼び方をするのは野口だけで、結構初めの方は恥ずかしかったなぁ‥。

最近はもう慣れてしまったから別にいいけど。


「池内、体操服貸して。」

「体操服‥あー、ごめん、今日持ってきてねぇわ。グッチーある?」

「あるよ、…はい。」


野口の体操服か…

サイズ合うかな…


「あいちゃん、臭かったらゴメンな。」

「厭、全然気にしないし、ありがと!じゃ借りるなぁ、」


そろそろ本鈴が鳴りそうなのでクラスへ戻った。



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