01
「…あ。」
登校時間五分前に学校へ着いた俺は、教室に入った瞬間気付いてしまった。
一限目は体育。
だから当たり前のようにクラスメート達は体操服に着替えている訳で…
しまったと思った。
体操服を忘れた。
俺は鞄を机に置くと急いで隣のクラス、一組へ行った。
教室の入り口で目をキョロキョロさせ、一番仲の良い池内敦(いけうちあつし)を探す。
あ見つけた、と思ったら肝心の池内は背を向けていて俺に気付かない。
代わりに池内の視線の先に居る野口康喜(のぐちやすき)と目が合った。
「あ。あいちゃんだ。」
野口は口角を上げてクールに笑い、俺に手を振ってくる。
それに対し俺も笑って手を振りながら2人に近付いていった。
「おぉ、マナトおはー、」
「おはよー、」
ようやく気が付いたらしい、池内が振り向いた。
ふあふあ甘い飴
俺の名前は谷本愛斗(たにもとまなと)。
読み方はマナトなんだけど、野口は何故か「あいちゃん」なんてふざけた呼び方をする。
そんな呼び方をするのは野口だけで、結構初めの方は恥ずかしかったなぁ‥。
最近はもう慣れてしまったから別にいいけど。
「池内、体操服貸して。」
「体操服‥あー、ごめん、今日持ってきてねぇわ。グッチーある?」
「あるよ、…はい。」
野口の体操服か…
サイズ合うかな…
「あいちゃん、臭かったらゴメンな。」
「厭、全然気にしないし、ありがと!じゃ借りるなぁ、」
そろそろ本鈴が鳴りそうなのでクラスへ戻った。
× next