わたしが守ってあげる

練習のない日の放課後。茜に呼び出された天馬は部室に来ていた。

「天馬くん、お願いがあるの。」

そう茜が天馬に告げると、天馬は好意的に笑った。

「おれに出来ることならなんでも手伝いますよー!」

「わたし、学ラン着てみたいの。貸して?」

天馬は一瞬きょとんとしたが、なんとなく、好奇心なんだろうなと思った。

「かまいませんよ。おれ、ジャージ取ってきますね。」

「大丈夫。わたしの制服着て?」

「ええっ!!??」

大声を上げて驚く天馬に、にこっ、と茜は笑う。この笑顔に天馬はいつも断りづらくなる。

「いや、でも…」

「背、あんまり変わらないから大丈夫。」

「そういう問題じゃ…」

天馬が口籠もる。すると茜は上目遣いに、

「……だめ?」

と首を傾げた。天馬も男だ、美少女に上目遣いに甘えられて、ドキッとこない筈もなく、顔を紅潮させた。

「うぐっ…わかりました。」

「やったぁ。」

茜はにぱっと笑うと、嬉しそうに自分の制服に手をかけた。

「うわぁああぁ!ちょっと待ってください!おれ居るんでここで脱がないでください!おれ先に脱ぎますから!ちょっと待ってください!」

きょとんと首を傾げる茜を隣の部屋に追いやり、急いで制服を脱ぐと、パンツ一丁で、扉の隙間から顔を覗かせた。

「茜さん、着替えたら呼んでください。おれこっちにいますんで。」

「はぁい。」

茜は制服を受け取ると、まだ温かいそれに着替えた。

しばらくして天馬はノックを聞いた。ドアから顔を覗かせたのは、学ラン姿の茜だった。茜は至極嬉しそうにしていた。

「はい、制服。」

「うー…じゃあ、お借りします。」

天馬は茜から制服を預かると、その場で着替えた。茜はわくわくしながら、それを見ていた。

「やっぱり似合う。」

「ううう…なんかスースーします…」

天馬が股を押さえながらもじもじしていると、茜はこっそりとカメラを構えた。

「記念。」

「あっ!」

天馬が声を上げるより早く、茜は不意打ちで天馬の女子制服姿をカメラに納めた。

「ふふ。かわいい。」

「もうー茜さんたら…。」

満足げな茜に、天馬もつよく怒れなかった。茜は天馬の腕にすり寄ると、ぎゅっとくっついた。

「わたしたちカップルみたい?」

「だとしたらすごく変なカップルですよ。普通にしてた方が良いんじゃ」

「だめ、わたしが彼氏がいいの。」

そう言って、茜は天馬の手を握りしめた。

「女の子みたいにリードされるの待ってたら、天馬くんを狙ってる男の子に先を越されちゃう。だから私が天馬くんをリードしたいの。」

「おれ…狙われてるんですか?」

天馬は自分があらゆる部員たちから好意を向けられていることに一切気付いていなかった。

「大丈夫。わたしが守ってあげる。」

茜はクスクスと笑うと、天馬をぎゅっと抱き締める。天馬はよくわからないまま目をぱちぱちさせた。
天馬を抱き締める茜の学ラン姿は、普段愛らしい女の子のはずの茜も少しだけ頼もしく、男勝りに見えた。


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5000打茜天ようやくできました。
オチが決まらずにグダグダになりました。しんさま出したかったんですが長くなるので割愛しちゃいましたね。
おぶさんリクエストありがとうございました〜!相思相愛で嬉しいです(笑)

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