メガネの似合う彼女/ドルベ

秋冷の日曜日、***の買い物に付き合わされている。
大混雑のハートランドタワー下のショッピングセンターで***は、両手に抱えきれないほどのショッピングバッグを作って待ち合わせのカフェに戻ってきた。
ちょうど欲しかった本の発売日で本屋に行く用事があったので着いては来たが、日曜というだけあって本屋ですらザワザワと騒がしく、目当ての本だけ急いで手にし、ものの数分で書店を出てきてしまった。
彼女はといえば、待ち合わせの時間に15分も遅れて戻ってきた。
先程購入した本を読み進めていたので遅れてきたことは特に気にならなかったが、彼女は買い物満足感に満ちた上機嫌と待たせたことへの申し訳なさを半分半分に顔に浮かべて私の目の前に座っている。

「……ドルベごめん……いやあのね、欲しいなって思ってた服がちょうど見つかって、それでね、試着室に入ってきてみたら店員さんに「こっちのカーディガンを合わせるといいですよ」って言われてグレーのそれも着てみたのね、そしたらその色も良かったんだけど別の黄色も可愛くって、どっちがいいかなってずっと鏡の前で迷ってて結局グレーにしたんだけど、何だっけ……そうそれでね、グレーのカーディガンが気に入って、それをそのまんま今着てきたんだけど、ほらこれ見て。どうかな。」

「君が気に入ったんだろう。私がどうこう言う筋合いはないんじゃないか。」

「そういうことじゃなくて。」

「なんだ?」

「ドルベは女の子がどうしておしゃれしてきてるとか考えられないの?」

「服が好きだからではないのか。」

「まあそれはそうなんだけど。」

「私は君にこうして欲しい、ああして欲しいという立場にはない。無粋だ。」

「そりゃ、この格好するならあっちのがいいとか、やたらと口出しされるよりはね、そういうドルベが好きなんだけど。」

「君の言う事はどうも回りくどい。結局どうしたいのか……何を私に言って欲しいんだ。」

「ドルベってば本当に素で言ってるの。あ、お姉さんー!紅茶のおかわりお願いします。ドルベは。」

「私も頂こう。それとミルクも。」

「……ね、ね! いまの眼鏡の店員さん可愛かったねえ。大きいレンズってちょっとダサくて可愛いっていうかー。本当私の好みの子!」

「……。私もかけているが。」

「ドルベの眼鏡、貸して。……えへへ! 私もメガネ似合う?」

「すまないが見えない。返してくれ。」

***がテーブルの上に身を乗り出し、ぼんやりとした輪郭が定まる。
彼女の前髪がさらりと額を撫でる。

「ねえ、似合う?」





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