非言語コミュニケーション/皇子

女は汗と精液、媚薬でどろどろに爛れ溶けた。唾液を口角から垂れ流し、首は骨が外れたかの如く、ぐたりと頭を傾けている。我の顎を伝い滴る汗が女の唇に落ちても反応はない。
秘部に指を滑らせれば腰だけがびくびくと跳ね、下半身と上半身で別の意思を持つ生き物のようだった。
「雌犬めが」
低めた声に憎々しさを込めて侮蔑の言葉を放つ。
肉の壁を割って中指を穴に潜り込ませると蛙の潰れた鳴き声のような声がした。指に感じる圧迫感は徐々に弱まり、滑りが増した。赤黒い内部では蜜が染み出しているのだろう。膣口を広げるように指を曲げる。口付けをしつつ、人差し指を差し入れる。
「ん!く、ッ、……!」
まだ抵抗する気力が有るようだが、それが功を奏する事はあり得ない。
首に空いた片手をかける。頚動脈のあたりをきゅ、と押さえるとどくどくと波打つ。皮膚の下では赤い血肉が伸縮と拍動を繰り返す。加えた力は子猫よりも弱い。それにも関わらず、女は涙をまたも零し怯えている。
「怯えるか、喘ぐか、どちらかにしたらどうだ?」
片手で秘部を弄り、もう一方の手では首の血流を阻害する。甚だ幼稚な行動だと気付けども、腹の深い所からじわじわと広がる欲求を抑える事が叶わず、こうして夜な夜な女を犯す。
「うう、ああ」
聞き慣れない言葉の羅列が女の口から吐き出される。所詮、言葉など無意味。言葉で表されぬものが世界の大半だ。
言葉を使わぬ動物が思考しないと言えるか。否。外敵から身を守る為に、見事に素材を使い分け巣を作るではないか。彼らは言葉に依らぬ思考の世界に存在しているのだ。
人間が思考に言葉を使うのは現象に名称が付与されているから。言葉は、言葉による限定的思考から切り離された滓に過ぎない。真の意味で言葉を伝えることは不可能だ。理解、共感、そうした一切の他者との共有感情はまやかし。人間の感情を求め、伝えることの意味の無さよ。
明日明後日明々後日、貴様は我の下でただ喘ぐ為に生を繋げば良いのだ。





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