闇に染まる

「彼」は次第に、「少女」を自分と同じにすれば…と考え始めた。


しかしそれは、「少女」を汚すことになる。真っ白な「少女」を黒くしてしまう。


その代わり、永遠の時間を手にすることができる。
しかし、それは、有って無いようなもの。


体は、日の光にあたれば消えてなくなり、
生き血を飲まなければ、自我を失い禁忌を犯し、自らの血を飲む。


「少女」は全てを知っていた。「彼」の考えていること全て。


「少女」の体は動かなくなった。


メモで会話することも難しい。


動かない体を無理に動かし、「彼」に伝えようとする。


『私を貴方と一緒にしてください。ずっとずっと一緒にいられるように』


「彼」は驚いた。


「少女」の方からこんなことを言ってくるなんて。


「本当にそれでいいのか。
一度こちらの世界に入れば、二度と今の生活…世界には戻れない。
そればかりか、人の血を求めるようになり、日の光にあたれば灰となって消えてしまう。」


本当にそれでもいいのか。と、「彼」は付け加える。「少女」は、微かに動く首を縦にふる。


今夜、「少女」は「彼」と同じになる。


「彼」は「少女」の唇にキスを落とした。
優しく、甘いキス。そして、自分の手首を噛み、血をだした。


深紅の血がタラリと流れる。その血を自らの唇に付ける。


「彼」は再び「少女」にキスを落とす。「少女」の口内に鉄の味が広がる。


苦いキス。


もう、後戻りはできない。


「少女」の瞳が虚ろになる。「彼」が小さく「おやすみ」と呟くと、瞳を閉じる「少女」


そのまま「彼」も眠りについた。



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