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「ホントに…あいつらに言っちまっていいんだな。」
「えぇ。きっとうまくいくわよ。…ねぇ、銀さん…」
『表と裏』
「おい、神楽!起きろ!」
「…ん…珍しいアルな、アタシより先に銀ちゃんが起きるなんて。」
「今日は大事な日だからな。」
眩し過ぎるほどの朝日と銀時により神楽は重い身体を起した。
銀時はいつもとは違い、朝からチャキチャキと動いている。
「それで?大事な日ってどういうことアルか?」
「え…あ…まぁ、全員集まってから話すわ。」
「どうせ銀ちゃんの大事なことなんて大したことないアル。期待なんてしてないけどな。」
神楽は興味なさそうに鼻をほじっていた。
一方、志村宅でも似たような会話がなされていた。
「新ちゃん…」
「…?どうかしましたか、姉上。」
「今日、大事な話をしなくちゃいけないから準備が出来たら万事屋銀ちゃんに行きましょう。」
「…?珍しいですね、姉上があそこに行こうだなんて言うのは。」
新八はお妙からの突然の誘いに疑問を感じながらも、何も言うことはできなかった。
…それだけお妙が真剣な顔をしていたから……
「よォ来たか。」
「なんですか、その大事な話って?」
新八が聞くと、銀時とお妙は顔を見合わせてニヤッと笑った。
そして、銀時は新八と神楽をじっと見てこう言い放った。
「俺たち、結婚することになったから。」
今のは何だったのか…?
はて、聞き間違えでもしたのだろうか…?
変な空気が流れる。
こうなることは全て計算済みだった、とでも言うように二人は至って平然を保っていた。
「…な、なに言ってるんですか、銀さん…」
「そうヨ!冗談にしちゃああまりに笑えないアル!」
「この話が冗談だって?笑わせんな。俺たちは真剣なんだからな。」
「そうよ。…ごめんなさいね、今まで黙ってて。」
初めはお妙が銀時に合わせて言っているのだと思っていたが、様子からしてそうではないらしい。
神楽は余程信じられないのだろう、銀時とお妙の間に立ってオロオロしている。
「…どういうふうになったらそんな展開になっちゃうアルか?…銀ちゃんとアネゴがそんなラブラブしてる姿なんて見たことがなかったネ!」
「いい大人は人前でラブラブしないもんなんだよ。全く、ガキはそこんとこ全然理解してねぇみたいだな。」
「ま、待ってください!僕、姉上が銀さんと会ってるところなんて見たことないですよ!」
「…それは…ねぇ…。」
困った表情でお妙は銀時を見る。
「あーあーもう!お前らは知らなくていいの!どこで会ってるとか…そういうのは聞くんじゃねぇよ。」
そう言って全く相手にしてくれない。
「まぁ、お前たちに黙ってたのは悪かったと思う。でもな、付き合ってただなんて言ったら一騒ぎになるだろ?」
「…そうかもしれませんけど…。」
「新ちゃん、銀さんはね私のことを考えてそうしていてくれたの。」
「どういうことアルか?」
「この話を知っちゃマズイゴリラが一匹いるわよね?」
「まぁ…もうゴリラって言っちゃってるけどね。」
「もしそれでゴリラがヒステリーになってしまったら何をするか想像できないじゃない?だから銀さんは誰にも言わずに黙っていたの。」
お妙は小さく溜息をつくと新八と神楽を見た。
「本当に、黙っていてごめんなさい。」
泣きそうな目でそう言われてしまっては何も言い返すことはできなかった。
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