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シキとアキラがトシマを脱出してから早3年が経つ。

シキは…といえば、ちょうど今から二ヶ月ほど前に復活したのだ。

以前のようにシキを追う者もいなくなり、彼らの生活も安定してきたのだった。



アキラはマグカップに二人分のコーヒーを注いでシキの隣に腰掛けた。

「シキ、コーヒー飲むだろ?」

「あぁ。」

そう言ってコーヒーを飲む。


「アキラ」

「…なんだよ」

急に真面目な顔をするもんだからアキラは少し驚く。


「後悔していないのか。」

「…なにが?」

「…何故お前は俺を介抱し続けた。」


その問い掛けにアキラは笑みを零す。

「何を言うかと思えばそんなことか。…俺は一生アンタと生きていきたいと思ったんだ。介抱するなんて当然な話だろ」

「…ふん。お前は相変わらず意味のわからんことを言う。」

そう言いつつも内心喜んでいるように見える。


アキラはマグカップ片手に立ち上がるとカレンダーのほうに近づく。
なにやらアキラが付けたものとは思えない赤丸印が付いていたのだ。

「シキ、この印なんだ?」

「なんだ、忘れたのか。」

「明日…?何かあったか…?」

「覚えていないのならそれまでだ。」

「…何かの記念日……」


ピンポーン…ピンポーン…


話を遮るように玄関のチャイムが鳴った。
アキラが玄関の扉を開けると懐かしい顔がたくさんあった。

「ケイスケ…処刑人…源泉…リン…アルビトロ…」

以前ならありえない組み合わせのメンバーがこうして集まっていることにアキラは戸惑いを隠せない。

ケイスケはヘラヘラ笑うとアキラを抱きしめた。


「んなっ!ケイスケ…なんだよ…」

「いやぁ久しぶりだなぁ…と思って。」

「はっ…放せって!」

アキラがあまりにも嫌がるので、ケイスケは少しがっかりしながら渋々離れた。

いきなりの訪問に全く状況が把握できないアキラ。

「へへっ、アキラ驚いた?アキラとクソ兄貴は知らないと思うけど、ここにいる俺達はみんなでトシマを抜けたんだよ。」

「まぁ、協力したってことさ。」

源泉も前に乗り出して話す。

「でもさーアキラたちってば、どこにいるのか全くわからなかったんだよねー。んでそのまま3年経った時にケイスケから連絡が入ったんだよ。『アキラたちの居場所がわかった』ってね。」

「それだからって…わざわざみんなで来る必要はなかったんじゃないのか?」

「…それがね、今日、兄貴に呼ばれて来たんだよ。」

「…シキに?」

ますます混乱する。

今までみんながどこにいるのか、ましてや生きているのかさえわからなかったのに、はたまた復活して二ヶ月しか経っていないシキがどうやって情報を得たのか気になってしょうがない。

眉間に皺を寄せ、考え込んでいるアキラの元にシキがやってきて、全員を見る。

「集まったか。中に入れ。」

あれから3年も経過しているというのに、全く衰えていないシキの支配者ぶりに、一同驚きを隠せなかった………



***

「お前らに報告したいことがあってここに呼んだ。」

一息ついたところでシキが話し始める。


「…アキラと結婚しようと思う。」

『!!!!!』

あまりにもさらりと言うものだから聞き逃しそうになってしまう。
アキラはかあっと顔を赤くするとシキの隣に行く。


「…聞いてないんだが…」

「ふっ、別に全員の前で言ってもいいと思っただけだ。」

「で、でも!ニホンは同性同士の結婚は認められてない……「認められたんだよ、アキラ。」

ケイスケが口を挟む。

「半月くらい前…かな?ニュースでやってたよ。」


「…というわけだ。婚姻届は明日持って行くからな。」


それだけ言うと、シキは隣りの部屋に行ってしまった。



急に静まり返る。
アキラは俯いたままなので表情が読めない。

「…アキラは…さ、いいと思ってるの?」

「……。」

ケイスケの問い掛けにも返事がない。

困る一同……


アキラは拳を握り絞め、呟いた。

「…悪い…今日はもう帰ってくれないか…」

その言葉にアルビトロは立ち上がるとキリヲとグンジを引き連れ帰って行った。


「…んじゃアキラ…また…」

あとに続くようにケイスケとリンと源泉も帰っていった。





誰もいない部屋に一人しゃがみ込む。


どうしてみんなの前で許可なくそんなことを言ったのか。
どうして自分の意見を聞いてくれなかったのか。


嬉しいような悲しいような気持ちになり、自分の肩を抱き絞めた…………











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