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「どうなさいますか総帥…」

「この城も修理が必要だな」



『優しい体温』



×月×日、午前0時

アキラとシキは身動きが取れなくなっていた。

城にあるエレベータが故障したのだ。

幸い、二人は無傷だったが一歩間違えば大事故になっていた




「アキラ、連絡は取れないのか」

「一応エレベータの中にある緊急ボタンを押してみたのですが全く応答がありません。おそらくこのエレベータ自体がダウンしてしまったようです」

「困ったものだな。生憎、城の者に連絡を取ってはみたが電波が届いていないようだ。」


故障により、照明も消えてしまい深夜だけあって閉じ込められた個室は真っ暗だった。
時間が経つにつれて次第に目が慣れてきたとはいえ、何となく互いの身体のラインが見える程度だ。


「…アキラ」

「はい」

「お前は暗いのがあまり好きではないだろう?大丈夫か?」

「正直暗いのは嫌いですが…大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」


こんな時にでもシキが気遣ってくれたことがアキラはとても嬉しかった。





こうして何も出来ないまま数十分が経っていた。いや、数時間かもしれない。
アキラはその場に腰を下ろし壁に凭れ掛かっていた。


「…総帥…寒くないですか?」

「いや、俺はどうもないが。何だ、寒いのか?」

「はい…」


城の中はあまり日光が入らないため、どこもひんやりとしている。
それだからだろうか…?
シキの服装はアキラの服装よりも厚着なため、気にならないのかもしれない。



急にアキラの身体が温かくなった。
そう、シキが自分の服を一枚アキラに掛けてやったのだ。


「これで少しは違うか?」

「そ、総帥!これでは貴方が…」

「別に構わん。」

「…すみません…」


アキラはシキから借りた服を腕は通さず羽織った。
ふわっとシキの匂いがした。

温かい…

こんな閉鎖的な空間にいてもほんの少しだけ安堵を覚えた。



「大丈夫か」

「…はい。」


こんな時だからだろうか、いつもよりシキが優しく感じた。


「真っ暗ですね…」

「早く連絡がつかないといつまで経ってもここから出られないからな。」

「でも…どうしてでしょう…俺はこの時間がもう少し続けばいいだなんて思ってしまいました…。…だって…貴方と別世界に来たみたいで…」

「別世界か…フン、そうかもしれんな。」

「貴方と一分一秒同じ時間を共有できるだけで俺は幸せです。」

「全く、可愛いことを言う。」


言った後に後悔した。
自分らしくないと自己嫌悪に陥る。
告白に似た言葉を自分が言う権利などどこにもないのだ。

「…すみません…」

「さっきからお前は何度謝れば気が済むんだ?別に謝る必要などどこにもない。」


シキはそう言うと、アキラに近づき頬に手を伸ばした。
目が慣れてきたので至近距離で見れば互いの顔がわかった。
その手を首の後ろに回しそのまま引き寄せた。

シキの思いがけない行動にアキラは大きくバランスを崩し、シキにしがみつくような格好になってしまった。


「そ…総帥…」

「俺もさっきお前と同じことを考えてしまった。…この時間がもう少し続けば…とな。」


流れに身を任せ互いの唇を重ねる。口付けたらすぐ離し、また口付ける。

「…ん…っふ、…ん…」

シキの舌がアキラの歯列を割って中に入ってくる。
口の奥で躊躇しているアキラの舌を無理矢理絡ませると今度は呼吸をも困難になるくらいのキスをする。


「そ…すい…」


アキラがやんわりと待ったをかける。


「…どうした?」

「駄目です…」

「??」

「このままではどうにかなってしまいそうです…」


含みのある言い方をしたアキラ。シキは口端を吊り上げるといきなりアキラの軍服のネクタイを解き始めた。


「!…総帥っ…」

「…ここには俺とお前の二人しかいない。違うか?」

「…そうですが…っぁ…」

さっと服の中に手を滑らせ、胸の突起を触る。
それだけでこんなに感じてしまうのは誰も来ない個室だからだろうか、それとも…?


「これだけで感じるのか?お前の身体は。」

「…あっ…」


咄嗟に声が出ないように手で抑えようとするが、それをシキは阻止した。


「ここは暗くてお前の顔も満足に見れない。声くらい出したっていいだろう?」

「…恥ずかしい…です…から…っ…」


シキはアキラの両手を掴み、先程解いたネクタイで手首をきつく結んだ。
アキラが抵抗できなくなったところで、今度はシキの手空いたほうの手がアキラの下股に触れる。


「苦しそうだな、アキラ。」


強い刺激を与えることをしないでただ触れるだけの行為を繰り返す。
主張したアキラのモノは苦しそうにズボンの布を押し上げている。



気がおかしくなってしまいそうだ……

アキラはギュッと固く目を瞑り刺激に耐える。

「…っ…総帥っ…」


急に嗚咽が聞こえだしたので、シキは手を止めた。

「…総帥っ………っ」


アキラが何を言ったのか聞き取れない。

「何だ」

「…早く…」

エレベータの壁に凭れているアキラは小さな声でそう言った。




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