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城の入口が急に騒がしくなった。
一人の兵士が部屋に来た。

「シキ様が…シキ様が戻られました!」

「本当ですか!…アキ……」

アキラはすやすやと眠っていた。
医師の言葉を聞いて安心したのだろう。





シキは足を負傷していた。しかし、兵士からアキラのことを聞くと、自分の治療を後回しにしてアキラの元に向かった。

「…二人にさせてくれ。」

シキが言うと医師と兵士は部屋を退室した。

シキはアキラが寝ているベットに腰掛け、その姿をじっと見つめた。

アキラの容態の悪さはシキの想像を遥かに越えていた。
包帯が巻かれた細く白い腕を取り、そっとその包帯を解く。
白い腕に映える赤は何とも言えなかった。
手首付近の深い傷を見てため息を就いた。

「…何を考えてこうなる……「…な…で…」

「…?」

アキラが何かを言っている。口元に耳を近づけると、今度は聞こえる大きさで喋った。

「…シキ…死なないで…」

涙をポロポロ流し、緩くシーツを掴みながら懇願しているアキラの身体を反射的に抱きしめた。

「…馬鹿が…。」

数日のうちにすっかり痩せてしまった身体。これ以上力を入れたら壊れてしまいそうだ。
アキラはこんな状態でも頭ではシキの事しか考えていない。
改めて、シキは自分がどれほど必要とされているか実感させられたのだった……。


抱きしめている腕を離す気が起きなかった。どうしてだろう……もし離してしまったらアキラがどこかに行ってしまうような気がしたからかもしれない。


「…キ…」

「…アキラ…」

「帰ってきたの…?」

「あぁ。」

「…よかった…本当によかった……」

そう言うと静かに目を閉じた。


シキは知らなかった…。
自分もアキラと同じように一筋の涙が頬に流れていたことを………






***
翌朝、アキラが目を覚ますとシキがアキラの髪を撫でていた。

「…シキ…」

あのあと、シキはずっとアキラの隣にいたのだ。

「…シキ…足怪我してる。」

「そんなことはどうでもいい。」

そう言いながらアキラの額に手をあてる。
熱は昨日と比べてだいぶ下がったようだ。

「…不安な思いをさせてすまなかった…。」

「ん?」

小声で言ったため、アキラには聞こえなかった。

アキラはシキに支えられて上半身を起こすと話し始めた。

「俺、夢を見たんだ。シキが死んじゃう夢…。」

「でも俺はここにいる。」

「…本当に悲しかった。シキが死ぬんなら俺も死のうと思ったんだ。」

「…その結果がこれか。」

シキが腕を触る。


「でも、一つ傷をつける毎に涙が出た…ずっと待ってるのは苦しかったんだ。」

そう言いながら一番深い傷を指でなぞる。


「そんなことをして誰が喜ぶと思う。馬鹿が。…変なことはするな。……確かに今回俺は約束を破った。だが、何があっても俺は必ずお前の元に帰ってくる。…そうだろ?」

「うん。そうだね…」


アキラは虚ろな目でシキを見つめて、動くほうの右手をシキの頬に宛て、自らシキに軽くキスをした。




「おかえり……」








end


2009.02.02

→次はあとがき





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