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「あ!名前さんだ!」

その声に名前が振り返ると、そこには以前沖矢経由で知り合った少年探偵団の子供達がこちらに駆けてくるのが見えた。

『こんにちは少年探偵団のみんな。学校の帰りかな?』

「うん!そうだよ!名前さんは?」

歩美たちに目線を合わせるために少し屈んでそう聞いた名前の問いに応えたのは、先ほど名前を見つけた歩美だった。

『買い物に行ってたんだ。ちょっとどこかで休憩しようと喫茶店でもないか探してたんだ。あいにく俺はあまりこの辺りの地理に詳しくなくて』

「この辺りならコナンくんの家の下にある喫茶ポアロがありますよ!」

『ポアロ?』

光彦の出した名前に名前は、『(米花町といい杯戸町といい随分ミステリーに所縁がある名前の地域だなあ)』と少しどうでもいいことを頭の片隅で考えていた。

「まあ僕の家って言っても小五郎のおじさんの探偵事務所だけどね」

「小五郎のおっちゃんはすげえ名探偵なんだぜ!」

名前もその名前は度々テレビや雑誌などで目にするので知っていた。まさか周りにそんな有名な名探偵の関係者がいたとは。

『へえ、それじゃあせっかく教えてもらったんし行ってみようかな』

「おっじゃあ俺たちも行こうぜ!暇だしよ!」

「いいですね!」

「歩美も行くー!」

「ったくオメーら…しゃあねえなー、まあどうせうちの下だしいっか。オメーはどうする?灰原」

「あたしはパス」

『えーっとよくわかんないけど灰原さん以外は一緒に来てくれる、のかな?』

「「「はーい!」」」

名前としてはまだ一切絡みのない灰原とこれを機に関わりを持てたらと考えていたので、どこか悲しい気持ちを抱えながら灰原以外の少年探偵団の後を追った。




「いらっしゃいま…あ」

『っ!?』

大声を出さなかっただけで褒めて欲しい、と後の名前は語る。普段の名前ならまず大声を上げたり表情を変えることはないが、その名前が大声を出しそうになったのは相応の理由があった。
子供達に案内されて着いた喫茶店に見知った男がいたからだ。

『(バ、バーボン!?なぜこの男が喫茶店で働いてるんだ…?潜入の任務か…?)』

「あれ?安室さんと名前さんって知り合いなの?」

安室と名前の様子に気がついたコナンが二人に声をかけた。

「ああ、ちょっと…ね」

「へー…(赤井さんと知り合いで安室さんとも…ますます名前さんの正体が気になるな)」

「みんな同じテーブルでいいかな?案内します」

『あ、あぁ…どうも』

普段のバーボンとは違う喫茶店員の安室に名前は戸惑いながらついて行って席に促された。

「ご注文はお決まりですか?」

『あー…じゃあ僕はブレンドで。みんな好きなもの頼んでいいよ』

「やったー!じゃあ歩美はねー」

『…お前なんでこんなところでウェイターなんてやってるんだ』

子供たちがメニューの夢中になっている間に名前が小声で安室に話しかけた。

「…カシャッサ……まああなたなら察しているとは思いますが、組織の任務のためですよ」

『……それが喫茶店の店員だなんてどんな任務だよ』

「それはたとえあなたでも言えませんね、僕もまだ組織には消されたくないんで」

『(組織に消されるって…そんなに重要な任務なのか…?)…みんな注文決まったかな?』

名前は安室との密談を早々に切り上げ(何やらコナンから視線を感じるからだ)、子供達に話しかける。

「おう!俺は……」

「……はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」

安室は丁寧に一礼すると、キッチンの中へ入っていった。

『(ったく…まさかたまたま入った喫茶店でバーボンが店員をやってるなんて……)』





「お待たせしました」

「わーい!おいしそー!」

『…どうも』

名前はブレンドに砂糖とミルクを入れてかき混ぜ、一口。鼻に抜けるブレンドの良い香りと舌触りのよい感触が名前を自然と笑顔にさせた。しかし視界に入った男の店員のせいで、名前の笑顔は鳴りを潜めた。

『(…バーボン…その噂は色々聞いているし優秀なのは知っていたが、プライベートではもちろん任務ですら一緒になったことのないこの男と…まさかこんな形で会うハメになるとは…)』

つきたい溜め息をグッと飲み込み、今一度ブレンドを口に含みつつ例の店員を盗み見た。

「ねえ、名前さんはこの後どうするの?」

『え?うーん…まあ買い物は全部済ませたし、コーヒーを飲んだら帰ろうかな』

「おや?すぐ帰ってしまうんですか?」

『!?』

コナンに話しかけられて安室から目を離したその一瞬に、その安室に背後から話しかけられ名前は思わず少し肩を揺らした。

「せっかく久しぶりに会えたんですから、積もる話もありますし」

『(積る話って…ろくに会話したことない僕と何を話すつもりだ…)』

人懐っこい笑みを浮かべる安室の本心が伺えず、名前は安室の話に乗るか迷ったが子供達の手前、奴を無下に扱うこともできずに名前もまた安室と同じような笑みを作って了承した。


子供達と別れ(その際コナンが何やらこちらを伺うような目で見てきた気がした。以前にも同じようなことがあったがあの少年にはなにかただならぬものを感じることがある)、ちょうど安室のバイトも終わって二人は場所を変えた。

『で、僕に話ってなんですか』

「変に警戒しないでくださいよ、同じ組織の仲間じゃないですか」

『同じ仲間って言ってたって同じ任務をしたこともなく、今初めてまともに会話したような僕に話すことなんてないように思えますが』

「本当はわかってるんじゃないですか?」

安室…バーボンがこちらを探るような瞳で見てきた。名前は彼が優秀な探り屋と知っていた。少しでも隙を見せれば自分のこと、自分の正体さえも気づかれるような、そんな気さえした。

『…なんのことですか?』

「ライ」

『…』

「あなたならまだ彼のこと、もちろん覚えてますよね?奴の部下だった、あなたなら…」

名前は安室が赤井を酷く敵視していたことを知っていた。そして彼が赤井の死に疑問を持っていることも。

『ええ、もちろん。NOC、でしたがね』

「組織の裏切り者である奴が先日死んだことは?」

『ジンから聞きました。それと俺になんの関係が?』

「僕はライ…赤井秀一は生きていると思っています。カシャッサ、あなたの意見が聞きたい」

『バーボン、あなたがどう考えていようがあなたの勝手ですが、僕の意見も何もありませんよ。確かに僕は彼の部下でしたがあくまでそれだけ。組織の任務内だけ関わるような関係です。彼は組織の中でも優秀だったのでNOCだったことは驚きですが、裏切り者ならジンが逃すはずがない。現にジンがその目で確認したと聞きましたから』

「ではあなたは赤井秀一が本当に死んだと?」

『はい』

名前がそう答えると安室はしばらく口を閉ざした。安室は一体なにをしたいのか、名前にはいまいちわからなかった。赤井の部下だった自分のこともNOCだと疑っているのか。そして赤井の死になにか絡んでいるのか。それにしては名前の意見を求めてきたり不可解な言動だと名前は思った。いずれにしろ安室は食えない男だ。名前は決して自分の本性は出さず、平静を保つようにした。

「こう見えて僕はあなたを買っているんですよ」

『は、あ』

安室の突拍子もない発言に名前は声も出なかった。

「実はあなたが奴の部下になる前から僕はあなたを僕の下に付けたいとジンに言っていたんですよ」

『…それは初耳です』

「ですがそれを奴が横から…相変わらず気にくわない男だ。だからその奴がいなくなった今、改めてあなたを僕の直属の部下にしたいとジンに言うつもりです」

『は…あ、の…全く話が見えないんですが』

突然ガラッと話が変わりついていけない名前。自分を部下に?奴はなにを考えているんだ?

「おや?ダメですか?」

『ダメというか…なぜ僕を』

まさか自分も赤井と同じのNOCだと疑われているのか、探りを入れられているのか。名前は安室を鋭く見つめた。

「言ったじゃないですか、僕はあなたを買っていると。端から見ていてもあなたは優秀だった。だから下に付けたい。ただそれだけですよ」

なんでもない風にまったく表情を変えない安室に名前は静かに考えていた。たとえ本当に自分がNOCだと疑われていたとしもバレなければいい話、名前には正体を悟られない自信があった。あのジンでさえも騙しきったという自信が。
そしてもう一つ、バーボンは赤井は生きていると考えていると、そう言った。敵視していた彼だからこそ考えつくことがあるのだろうか。もし本当に生きていたとしたらそれを自分の目で確かめたい。名前はその考えに行き着いた。それには、

『…わかりました、あなたの下につきます。僕の方からもジンに伝えておきます』

「了承してくれて良かったです。これから、よろしくカシャッサ」

『はい、バーボン…』

柔らかい笑みを浮かべてバーボンは名前と別れた。

(バーボンと行動を共にして、なんとか赤井さんのことを…)

(赤井に奪われた彼をやっと自分の元に引き寄せることができた…)






以前拍手でバーボンとの絡みを見たいと言っていただいたので
無駄に長くなってしまいましたがほんの触りの絡みのみ…
以前から主のことが気になっていたバーボンとバーボンを疑いながらも赤井のことが気になる主
お互いにNOCだとは知らない設定