ch1.黒髪の兄弟


ch1.黒髪の兄弟



人里離れた真夜中の山。普段は鳥や動物の鳴き声で煩い森なのだろうが、今夜はやけに静まりかえっていた。何もない偏狭な土地に存在するその山の奥深く、木々の合間の少し余裕のある空間に二人の青年が座り込んでいた。

闇に解けるような漆黒の髪の男達。

一人は中途半端に長い髪を一つに結んだ男。真っ暗闇の中で、彼は何を考えているのか定かでないような虚ろな目で、ただじっと自身の足元を見つめていた。
その男の名前はアルフォンソ=ウリッセ=モンテサント。そして、その彼の隣で座ったまま眠っている短髪の男が、彼の弟のルカ=モンテサント。

アルフォンソ達がここに来たのは、二時間ほど前のことだった。
彼らは所属する組織から、今夜この山に現れるだろう<R生物>という異形のモンスターを討伐する任務を受けて、今まさに待機しているところであった。


R生物とは、数週間に一度だけ月が真っ赤に染まる日に、その赤い月から産み落とされるように空から降ってくる異形の生物の総称だ。R生物は姿形こそ様々だが、全てに共通して人をも食らう獰猛な生物であり、世界で最も畏怖されている存在の一つだ。


そのR生物を討つべく、組織から派遣されたのがアルフォンソと、彼の弟のルカである。
昼間に組織の幹部たちに散々こき使われていた様子のルカは、ここで待機しようというアルフォンソの言葉に頷くと、辺りの落ち着いたスペースに腰をおろして、すぐに両膝を抱えるようにして早々に寝てしまったようで、今に至る。

――今は何時だろう?

アルフォンソは腕時計のバックライトをぼんやりと発光させる。ディスプレイにはpm11:48と表示されていた。
もうすぐ零時になる。そう思いながら、アルフォンソは遥か頭上に浮かぶ月を見上げた。
この、いつもと変わらぬ白とも黄色ともつかぬ神秘的な輝きを放つ月の光が、真っ赤になる時。その時、空からR生物と呼ばれるモンスター、災厄が降ってくる。

俺にとっては大したことのない敵だとはいえ、命がけの戦いがもうすぐ始まるんだ。弟のルカが一緒である以上、いつも以上に気が抜けない任務だ。内心つぶやくと、アルフォンソは横で寝ている弟の寝顔を見て少し和んだあと、微笑みながら弟の柔らかい黒髪をくしゃりと撫でた。




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