「あれ、お魚の餌?」
サクラがリビングのテーブルの上に置かれていた、筒を手に取った。円筒のそれを手に取る。周りには派手な色の熱帯魚の写真。振ると、シャカシャカと小さい粒がぶつかり合う音がした。どこからどう見ても魚の餌。
「あ、それオレの〜」
「ファイさんのですか?」
当たり前のことだが魚などは飼っていない。魚の餌など使う場面も無い。ならこの餌は何なのだろうか。サクラはためらわず、自分の疑問をファイに訊いてみた。
「えっとねー。買い物の帰りに見つけた泉に綺麗な魚が泳いでるんだー。他の魚は全然いなくて、そのお魚1匹しか居ないんだけど凄い綺麗なんだよ。そのお魚に餌あげてるんだ」
ファイはいつも以上に笑顔で、嬉しそうに答える。きっとファイのいうとおり、凄く綺麗な魚なのだろうと、サクラは思った。
「大好きなんですね。そのお魚さんのこと」
サクラの言葉に一瞬きょとんとするファイ。そしてにこっと笑って
「そうだね」
幸せそうに、答えた。
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