Visibile ferita

 暖かな英雄の証




「屋上から乗り込むとは考えたな、ジューダス。」
「やつらの手法を真似しただけだ。確かに、強襲ならこれが最も効果的だからな。」
イクシフォスラーを無事に見つけ出し、そしてジューダスの操縦でアイグレッテに乗り込んだ。降り立ったストレイライズ神殿の屋上で、ロニがジューダスに視線を送る。
ロニの視線を受けたジューダスは、事も無げに呟いた。皮肉たっぷりのその言葉には棘が数百本は刺さっているだろう。向けているのは間違いなくエルレインなのだろうが。

「! 誰か来る。」
「侵入者め! 生きて帰れるとは思うなよ!」
「あー、ばれちゃったのか。」
屋上の入り口を見て、ルナが短く呟いた。同時に武器を持った兵士たちが現れる。
兵士と言ってもファンダリア兵のように同じ鎧を身にまとっているわけではなく、傭兵の類のようだ。おそらくはエルレインが雇ったのか、モンスター化しているかのどちらかだろう。
武器を向けてくる兵士を気だるげに眺めながら、まるで他人事のようにフィアが呟く。

「覚悟しろ!」
慌てるこちらにはお構いなしに兵士たちは武器を振り下ろしてくる。しかしすぐに剣を抜いたフィアが駆け抜けていった。
一人目の剣を受け止めると、カイルを振り返る。

「何やってんのカイル! 早くこいつら片付けないとリアラのとこまで行けないよ!」
「あっ、うん!」
フィアの声に頷いたカイルは剣を抜くと、兵士の一人に斬りかかった。それを見てロニも同様兵士たちの中へと突っ込んでいき、ナナリーも武器を構える。

ジューダスも近場の兵士に短剣を投げると今度は斬りかかってきた兵士に備えて晶術を唱え始めた。詠唱に気付いた数人がジューダスに向かうが、それはルナに阻まれる。斬った兵士に微笑むと彼は残酷にも詠唱短縮で晶術を放つ。無慈悲にも複数の風の刃が兵士たちを切り裂いた。


「わざわざ警備兵まで用意してたんだ。リアラがこの中にいるのは間違いない。エルレインのところへ行ったんだとしたら大聖堂だ。やつは必ずそこにいる。」
「大聖堂か……よし、急ごうみんな!」
ロニが拳を握った。あらかたの兵が片付いたのを見ると、各々武器を収める。
カイルがロニの言葉に頷いて、後ろを振り返る。カイルの声に全員が頷き、聖堂の中へと足を踏み入れた。


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