Visibile ferita

 霞隠




「ん……?」
目を覚ましたフィアは頬にあった柔らかい感覚に気づいた。暖かい。
頬ずりするようにそれに擦り寄ると再び瞼が下りてくる。

「お前の言を素直に信じろというのか。」
「!」
のだが、恐ろしく冷たい声が耳を打った。
跳ねるように身を起こしたフィアにその場の全員の視線が集まる。
近くにいたナナリーが顔を覗き込んできた。心配そうな彼女の表情に、少しばかり申し訳ない気持ちになる。

「大丈夫かい? あんた揺さぶっても起きなかったからそのままにしといたんだけど。」
「う、うん。大丈夫。えーと、あの…これどーなってんの、ナナリー。」
状況をナナリーに尋ねると、彼女は苦虫を噛み潰したような表情を見せた。
彼女にとってもこの状況は居心地の悪いものなのだろう。


ジューダスがルナを睨み付けていて、ルナは困ったような表情を見せている。
カイルはおろおろと視線を彷徨わせるばかりだ。
ロニは双方の動きをじっと見ているが、判断ができずに傍観体勢になってしまっているようだ。

「なんか、夢の世界で見たやつ…なんだけど、あたしらが見てたのとルナの見てたの、違うんだってさ。」
「は? どういうこと?」
ナナリーも話に入れず、この状態…といったところか。
リアラが一番状況を把握していそうだが、彼女は力を使った反動なのか、近くのベッドですやすやと寝息を立てていた。

「ジューダスもあんたとおんなじ反応してた。」
素っ頓狂な声を上げたフィアを見て、ナナリーは肩をすくめる。
話が飲み込めない。もう一度ゆっくり聞いて自分の情報を整理する必要がある。



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