Visibile ferita

 海の底に沈めた秘密





「間一髪ってところだったな。」
墜落する飛行竜を見やったロニがため息と共に小さく漏らした。

「でも、結局レンズは取り返せなかったね…」
「他に方法がなかったんだ。仕方あるまい。」
その隣では眉を下げてカイルが肩を落とす。落ち込んだ様子の彼に、ジューダスが声をかけた。

「…あれ?」
不器用な励ましはカイルにも通じたようだった。
ゆっくりと頷いたカイルは何かに気付いたのか窓の外に視線を移す。そして彼はその空色の双眸を大きく見開いた。


「おい、俺たちも巻き込まれちまうぞ!?」
カイルの反応に眉を寄せたロニも、後ろから窓を覗き込む。そしてカイル同様、彼も目を見開くと操縦席のジューダスを振り返った。

「なにやってんだジューダス! 逃げろ!」
「くそっ! 出力が上がらない…!」
ロニが叫ぶ。フィアも他の窓から外を見ると、真っ黒な球体のような物が大きくなりながらイクシフォスラーに迫って来ていた。
操縦席のジューダスを見れば、忙しなく操縦レバーを動かしている。彼にも予想外の出来事であることは誰の目にも明らかだった。


「ダメだっ! 間に合わねえ!」
焦ったロニの声が聞こえたと同時に機体の揺れは激しくなった。がくがくと揺さぶられて混濁する意識の中、いつかどこかで体験した出来事が頭を過ぎる。



『やばい……! さっきのブレス攻撃で制御システムが壊れたのか!?』
『え!? それってどういう……』
『落ちるってことだよ! 馬鹿   !!』
焦った声が聞こえたのか、金髪の青年は空色の双眸を見開いた。彼のその様子は言葉にするならば“きょとん”そのものだった。
なんてのんきな奴だ! 殴りたくなる衝動に駆られたがそこはぐっとこらえて叫ぶ。

『う、嘘だろ……?』
『こんな状況で嘘がつけるか!』
そんな彼は窓の外とこちらを見比べて、困惑したような声を上げる。怒鳴りつけた直後、乗っている物がぐるぐると一定方向に回転し始めた。

『うわぁぁぁぁぁああ!!』
叫びたいのはこっちだばかぁぁぁ!
そんな胸中を青年が察してくれるはずもなく、意識が真っ黒に塗り潰された。



prev / next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -