Disapper tear

 翳る太陽






「んーーーっ! 到着っ!!」
「ここがモリュウ領か……やっと着いたぞ。」
あの後落ちたルーティとスタンを回収してなんとか洞窟を抜け、モリュウに到着した。アリアが伸び、スタンが辺りを見回す。

「シデン領と雰囲気が似てるわね。」
「風情があるね。独特の文化が根付いているって聞いていたけど……」
同じようにルーティも視線を一巡させ、建物からくる雰囲気についてコメントした。カノンも珍しそうに、目の前の宿を見上げている。


『街の人間に話を聞いてみろ。グレバムの事がわかるかもしれない。』
「分かった。」
ディムロスの助言にスタンが頷く。皆が人を探し始める中、フィリアは落ち着かない様子で周囲を見回していた。
それに気付いたカノンはフィリアの顔を覗き込む。


「フィリア、どうかしたの?」
「カノンさん…。あの……助っ人の件は…」
「助っ人?」
首を傾げたカノンに、フィリアはシデン領であったことを話した。
なんでも助っ人として海底洞窟の場所を教えてもらったとか。


「そんなことがあったんだね。」
『助っ人……ね。けどよ、多分それは俺達に解決できる問題じゃねーよ。』
「でも……」
そこでルーティがアークの言った“助っ人”という単語に反応する。ざざっと素早く近づいて来て、びしりとカノンの鼻面を指差した。
きょとりとサファイアを見開くカノンに、ルーティが詰め寄った。

「ねぇちょっと、助っ人ってなんの話?」
「僕とフィリアの秘密ってことにしておくよ。」
差された指をやんわりと退け、カノンは微笑む。その笑顔でルーティの疑問やら何やらを全て封殺してしまう彼は相当の強者だと思った。

「…あれ?」
ルーティとカノンのやり取りを傍観していたアリアは、聞こえて来た歌声と人だかりが出来ていることに気がつく。
聴衆の真ん中で派手な羽飾りを付けた男が、マンドリンを弾いて歌っているのが見えた。

「あの人……」
「ご静聴、感謝するぜ。」
「おぉーっ!」
アリアと同じく彼に気付いたらしいスタンが男をじっと見て歌に聴き入る。
曲は終盤だったのかじゃらんとマンドリンを弾き、男は洗練された仕草で頭を下げた。

その様子にスタンが歓声を上げて手を叩く。男は気さくな笑顔をみせて、リクエストを尋ねている。




「ん…?」
「どうした、カノン。」
「……彼は…」
スタンの声が耳に入ったのか、カノンがその金髪の男に視線を移す。隣のリオンが紫水晶を見開いてカノンの名前を呼んだ。
小さく口を開くカノンの声を聞き逃すまいと耳を澄ます。


「モリュウの民よ!」
しかし彼の声が紡がれるよりも早く、他の男の声が響いた。
視線を移す。軽い鎧のようなものを身につけている辺り、モリュウ城の兵士だろう。

兵士はモリュウ領民たちに港へ向かうように告げ、去って行った。しかし、その兵士の言葉の中に一行が探していた情報が含まれていた。



「ティベリウス……!」
「アクアヴェイルを治める大王の名だね。シデンでは彼がグレバムを参謀に迎えたって話が出ていたよ。」
「あ! それ俺も聞いた!!」
「なぜ二人が知っているんだ?あの場にはいなかっただろう?」
シデンの街に到着して早々、この二人は勝手にも街を散策してくると姿をくらましたのだ。
その後で情報を得た一行だったのだが、あの場にいた二人が何故その情報を知っているのかとマリーは首を傾げる。


「俺? えっとね、なんかガラの悪いにーちゃんたちに絡まれてさ。自己防衛ってことで反撃したら簡単にのしちゃって、せっかくだから街に起こってること聞いたら話してくれたんだ。カノンは?」
「僕は街を歩いていたらご婦人たちに呼び止められて、この辺で起こってることを聞かせてくれたんだ。危ないから気をつけてねって。」
「お前たちは……」
酷く疲れたようにリオンが溜め息をついた。
その隣でフィリアが手を叩く。


「とにかく、港でしたわね。行ってみましょう。」

 


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