Disapper tear

 落ちたのは、射抜いたのは






「これから行くアクアヴェイルってどんな国なんだ?」

スタンの声が船室に響く。彼の声に、思い思いに過ごしていた一同は顔を上げた。



イレーヌに出してもらった船でアクアヴェイルの近くまで接近し、そこからボートに乗り換えて目的地を目指す。
長い船旅の途中である。そんな中のスタンの行動だった。

蛇足ではあるがコングマンの行方はノイシュタットだ。
復興を手伝うらしく、フィリアとの別れを惜しみながら見送ってくれた。




「実はアクアヴェイルというのは単一国家の名前ではありません。シデン、モリュウ、トウケイからなる連合公国の総称です。」
「国土はいくつもの島から成り立つってさ。」
「国と国との間は船で行き来して、シデンの街はボートで移動するんだって。」
「へー…ボートでか……あ、敵国みたいなものってのは?」
スタンの疑問にフィリアが辞書並の答えを返し、アリアが補足としてそれに付け足す。
本を読みながらその様子を聞いていたカノンが微笑んで本を閉じた。更に付け加えられた補足にスタンが感心したように声を上げる。

そんな説明に疑問は解消したらしいが、スタンはまたも新しい疑問が芽生えたようだ。
首を傾げてフィリアに尋ねるスタンはきょとりと空色の目を瞬かせる。



「あそこは鎖国体制を敷いていて、他国とほとんど交流がないんです。」
「特にセインガルドとは仲悪いって有名だよー。そのこと言ってんじゃないか?」
「なるほど。」
またもフィリアとアリアの説明コンボに、スタンが感心したような声を上げると大きく二回頷いた。
すると今度はルーティが「風の噂だけど、」と切り出した。


「アクアヴェイルには強力な海軍があるそうね。……案外、武装船団と繋がってたりして。」
「うーん…困ったねぇ。」
「アンタのその緊張感の無さ……こっちが脱力しちゃうわ…。」
「…それは……」
困っているようには見えず、むしろとても楽しそうに微笑むカノンにルーティが脱力する。
そんなルーティを見て、カノンはしっかり二回瞬きをして、そして微笑んだ。


「ありがとう。」
「ぜんっぜん! まったく! これっぽっちも! 褒めてないわよっ!!」
「? ……どうした、リオン?」
「へ?」
明らかにカノンにからかわれているルーティを見て楽しんでいたアリアは、スタンの声に驚いて後ろを振り返る。
そこにいたのは顔色が真っ青で、どこか元気のないリオンの姿だった。


「具合でも悪いのか?」
「……考え事をしたくなった。甲板にいる。」
スタンの声にも皮肉を返すことなく、リオンはふらりと船室を出ていく。
その背中を視線で追っていたアリアだったが、彼にだって考え事をしたくなる時はあるし、自分たちがうるさかったのも事実であると考えた。


 


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