Disapper tear

 偽善と善意の間違い探し






「あーもーめんどくさい!!」
アリアの悲鳴が、砂漠地帯に響き渡った。


「仕方ないだろう!」
珍しくもないがリオンも苛立ちを露わにしている。
掃いて捨てるほどとはよく言ったものだ。
目の前にカルビオラがあるのにも関わらず、一行はモンスターの大群から足止めを喰らっているのである。

「アクアエッジ!! ……はぁ……げ、限界…!」
「耐えろアリア!」
「…無理言うなっての!」
何体斬ろうが、次から次へと湧いてくるモンスターの大群に、アリアの殺意も湧き上がるばかりだ。しかし、ここで感情のまま暴走するなんていうことは客員剣士としてしてはいけないことである。
だから今まで少ない水系晶術を駆使してなんとか奮闘していたのだが、さすがに限界というものがある。


「今ルーティさんは回復で手一杯ですわ…っ! アリアさん!」
「了解!」
リオンから投げられたグミを捕まえて、口の中へ放り込む。少し楽になったが、それでも疲労が蓄積していることには変わりない。
フィリアの声に後退すると同時に、彼女の術式が組み上がる。

「アイストルネード!!」
氷の竜巻が敵を襲った。それでフィリアを危険と見たのか、モンスターたちは彼女へ向かっていく。
その前にスタンが飛び出てディムロスを振るった。



「爆炎剣!」
剣と、そこから立ち昇る炎がモンスターを襲う。しかしモンスターはけろりとしていてスタンが目を見開いた。
反撃を間一髪でかわすと、スタンは悔しげに眉を寄せる。

「…くそー、炎が効かない!!」
「猛襲剣!」
その横をマリーが駆けて行き、斧を振るう。がいんと鈍い音がすると、一旦後退して再び斬撃を繰り出した。
そしてその斬撃は見事甲羅のような場所のヒビを貫通し、モンスターが霧散する。スタンの隣まで下がったマリーが苦しげな声で呟いた。
「……硬いな。」


「グレイブ!」
マリーが下がったのを見ると、リオンは術式を組み上げた。
大地の猛威がモンスターに牙を剥く。

「おい馬鹿女!」
リオンは叫ぶようにルーティを呼んだ。両者の距離が離れていたからである。


「何よガキ! あぁもうスタン、あんたは無駄に突っ込んでいくんじゃないわよ! ──ファーストエイド!!」
「……おや…?」
「いい加減に攻撃晶術を使わないか! ──ストーンウォール!!」
「どうかなされたのですか?」
「回復で忙しいのよ! ちょっとアリアまで突っ込んでいかないでよ! ──ヒール!!」
「…お手伝いしましょうか?」
「あぁもう本当に猫の手も借りたいくらいよ!」

騒がしい戦場に何者かの声が混じったが、一行はそれに気付かない。


「かしこまりました。」
「え…」
何者かはにこりと微笑むと、通る声でそう言った。
そこでやっと何者かの声に気付いたスタンがきょとんと目を見開いて、その方向を見る。


「──雪原を駆けし愛しき雪姫…舞え、奏でるのは疾風の調べ──!」
そこにいたのは黒いコートに身を包んだ、小柄な少年だった。
魔法陣が彼を囲んでいる──つまり、晶術が使えるということだ。晶力が高まり、魔法陣が光を放つ。


「ブリザード!」
少年が手を掲げると広範囲に広がった吹雪が、その場のモンスターたちを凍てつかせていった。
絶命していくモンスターたちを見届けると少年はこちらを向く。



「……あ! あなたは…!」
フィリアが目を見開いた。少年はチェリクで出会った時にパインをくれた少年だったからだ。
そんなフィリアの声に少年はにっこりと笑った。

「こんにちは。」
「カノン……」
「お久しぶりです。」
アリアが、少年の名前を呼ぶ。それに少年は藤色の剣の柄に手を添えると、また微笑んだ。


「カルビオラまでご案内、及び護衛致します。リオン様ご一行の皆様。」

 


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