Disapper tear

 海月はまどろむ







「んー、涼しい。」
風をまともに受けながら、アリアは一言呟きを漏らした。
短めの髪は揺れ、目を閉じれば顔に心地よい風がぶつかる。…なんといったってここは飛行竜――空を飛ぶ乗り物なのである。



「…さすがは飛行竜ルミナ・ドラゴニス! 眺めも速さもサイコーだね。」
現在位置は空の上。右を見れば大きな翼。
たくさんの人間を乗せた飛行竜が大きな翼をばさばさと動かす。
健気にも人間に従いし古代の遺物、飛行竜は空路を辿りセインガルド王国ダリルシェイドに向かっていた。


「……なんかデジャヴだなぁ…」
しばらくデッキに佇んでいたアリアは小さくぼやく。
なんといってもこの飛行竜、スタンと出会ってファンダリアに落ちるまでアリアが乗っていたのだ。デジャヴで当然だろう。

デッキに佇んだまま、アリアは伸びをする。深呼吸すると新鮮な空気が肺に流れ込んできて、心地良かった。


「そういや……」

ストレイライズ神殿とハイデルベルグの地下道で見た、謎の光景。
覚えているようで、覚えていない。
記憶に残っているのは綺麗な青と、恐怖を感じるオレンジ。それだけだ。


「青……?」

首を傾げる。
なんで青が印象に残っているのだろう。自分の持っている色はオレンジと赤だ。
しかし印象に残るのは真逆の青。何故だろう。



「ま、考えても仕方ないか。」
そう結論付けて、アリアはデッキに寄りかかる。
前方に見えて来たのはセインガルドだ。



「この旅、結構長いようで短かったなぁ。」

そうぼやきながら、アリアは船室に入って行った。



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