Disapper tear

 全てが終わり、回り出す





「グレバム! 今度こそ終わりだ!!」

時計塔に一番に飛び込んだスタンが、目の前の男に向かって声を張り上げた。

「貴様ら……まさかここまで来るとはな。」
振り返った男――グレバムは余裕の表情を崩さずに一行を睨む。
ウッドロウを見つけたグレバムは、恭しく礼をして見せた。


「…これはこれはウッドロウ殿下。先日、無様に逃げ延びたと思いきや、かように早くまたお会い出来るとは!」
「そんな低俗な挑発に揺れるほど、未熟な心は持ち合わせておらんよ。」
グレバムの挑発を涼しい顔で受け流し、ウッドロウは微笑んでみせる。
続けてウッドロウは静かに、しかし強い目でグレバムを見据えて言い放った。



「ファンダリア王国の名にかけて今こそすべての決着をつける!」
「フン。ならばこの剣で貴様ら全員返り討ちにしてくれよう。」
鼻を鳴らしたグレバムは銀色の剣を握り、にやりと笑う。
それを見たウッドロウは目を見開いた。


「イクティノス!」
『みんな俺にかまうな。さっさとグレバムを倒せ!』

イクティノスが叫ぶ。
今にも飛び出しそうだった一行はその声で踏み止まった。



「さらに……! 貴様らにはとっておきの褒美をくれてやる。神の眼の力、今こそ見よ!」

グレバムが剣を掲げると何かが雲を割って降りてくる。
それを見たアリアが目を見開いた。



「なっ……ドラゴン!?」

彼女の声に全員が上を向いて目を見張る。ドラゴンが口を開けた。

「……っ!?」
ドラゴンの視線の先を辿ったカノンが勢いよく駆け出す。


「スタン!!」
「え? おわっ!?」

そのままカノンはスタンに突進して一緒に転がる。スタンが立っていた場所は一面真っ黒に焼け焦げていた。
起き上がったスタンが目を向いてぎょっとする。



「く……!」

腕を押さえるカノンは火球が掠ったのだろう、酷い火傷を負っていた。
慌ててスタンが彼を支え、グレバムから距離を取る。

「大丈夫か、カノン…?」
「うん。ごめんね、上手く避けられると……思ったんだけど…」
「ちょっと、しっかりして!」
すぐにルーティも駆け付け、カノンを支えた。
回復晶術を唱え、彼女は優しくカノンの腕に触れる。
「──ヒール!」



「ありがとう、ルーティ。」

白い光が傷を包み込み、カノンの腕にある傷はあっという間に塞がっていった。
立ち上がってルーティに微笑みかけるカノンを追い越して、アリアが飛び出していく。
彼女の後ろではリオンとフィリアが詠唱を始めている。


「そのまま行けるか、カノン!」
「もちろん。」
「おっけー! 相棒、行こ!!」
「任せて。」

リオンとアリアの声に返答したカノンはすぐさま抜刀して、グレバムに斬りかかる。
それをかわしたグレバムはカノンに剣を振り下ろした。
しかしカノンは予見していたかのように素早い動きで後退し、にっこりと笑みを浮かべる。

「迅雷!」
「剛烈!」
彼の笑みの理由、それは彼の背後でグレバムに照準を合わせていたチェルシーとウッドロウ、そして。

「隙ありぃ!!」

グレバムの背後に回り込んでいたアリア。
彼女の繰り出した斬撃は見事、グレバムに致命傷を与えた。

「ぐ…っ、おのれ……! だが!!」
「うわっ!?」
しかしそこに繰り出される強い突風。それを受けてスタンが声を上げた。
全員が背後を振り返る。そこにはあのドラゴンが不気味に佇んでいた。


「あのドラゴン……邪魔してくるみたいだ…!」
「ドラゴンに注意しつつ、グレバムを倒さなければいけないということか……」

スタンの声にウッドロウが返す。背後で詠唱中の三人がドラゴンのせいで詠唱を中断させられてしまったら、非常に不利だ。

 


prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -