Disapper tear

 全てが終わり、回り出す




「どうしたら……」
「考える前に手を動かせ!」

立ち止まってしまったスタンにリオンの檄が飛んだ。
次第に彼の晶力は高まっていき、グレバムに向けられる。

「──グランドダッシャー!!」
「行きますわ! ──レイ!」
「たぁっ!」
リオンの術と同じくして、フィリアの術式も組みあがった。
大地の咆哮が光の雨がグレバムを襲う。
その隙をついて飛び出していったアリアがまたもグレバムに致命傷を与えた。

「ぐぅっ!」
「まだまだ! ──巻き込めっ! メイルシュトローム!!」

ルーティが追い打ちをかける。
彼女が攻撃に転じるのは珍しい。それだけ余裕があるということだろう。


「──光、水と成りて…穢れを浄化せし雨、降り注がん。」
今までに聞いたことのない言葉。


「──力を示せ迅雷!」
晶術の詠唱ともどこかが違うような気がするその言葉は、フィリアの隣から聞こえてくる。



「逃がさないよ。」
よろよろと後退するグレバムに、藤色の剣が向けられる。
それの持ち主は残酷にも美しい笑みを湛えたまま、最後の言葉を口にした。


「神鳴!」

耳を劈くような音と目を潰すような光の氾濫。
それに押しつぶされたグレバムは、声をあげて吹っ飛んでいく。


「ぐぉぉぉぉっ!!」

そのまま時計塔の床に体を投げ出して、グレバムはぴくりとも動かなくなった。




「や……やった!?」
「……おそらく、ね。」
スタンの声に、カノンがドラゴンを見上げて答える。
神の眼を操っていたグレバムが倒れたのでドラゴンも機能を停止したようだ。


「バカな……! この私が…!」
「勝った…!」

床に伏せったままグレバムが声をあげた。
それを見ながら、肩で息をしているスタンがディムロスを収めながら顔を緩める。
アトワイトをくるりと回して、ルーティも溜め息をついた。
「さんざん手こずらされたけど、ようやくケリがついたわね。」


「グレバム、もう終わりです。これ以上の悪あがきはムダです。」
「イクティノスを返してもらうぞ、グレバム。」

フィリアが両手を組んで、静かにグレバムへ言い放つ。続いてウッドロウもイクティノスを回収しようと一歩踏み出した。



「バカめ……この程度で私に勝ったと思うな…!」

しかしグレバムはそう吐いて立ち上がると、恐ろしい形相でイクティノスを掲げる。チェルシーがウッドロウの身を案じて彼の名を呼んだ。
掲げたイクティノスに神の眼のエネルギーが集束し、禍々しい光が周囲を照らし出す。
「神の眼ある限り、私は無敵だ!」



『ぐああああああああっ!?』
『いかん! 神の眼の力を直接イクティノスに注ぎ込む気か!』
『あんなことをしては、コアクリスタルが持たないわ!』
『ったく馬鹿じゃねーのかあのじじい!! イクティノスを殺す気かよ!』
イクティノスの悲痛な声に、ディムロスが反応する。彼に続いてアトワイトが焦ったような声を出し、アークが舌を打った。

その焦りようを聞いたスタン以下、マスターたちが眉を寄せる。
もちろん声の聞こえるアリアもだ。



「この剣に神の眼の力を宿し、貴様らに直接! ぶつけてやろう!」
「やめろグレバム!」
血走った目をぎょろりとこちらに向けて、グレバムは叫ぶ。それを止めようとウッドロウがまた一歩踏み出した。


「危ない! ウッドロウさん!!」

スタンがウッドロウを呼び止めようとするが、ウッドロウとて父の遺したイクティノスをみすみす破壊されるわけにはいかないだろう。



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