Disapper tear

 守りたいのは誰か




「バティスタ!」
そう彼の名を呼んだのは誰だったのか。
呼ばれたバティスタは振り返ると、冷酷な笑みと共に得物を構える。


「来たか。今度は前のようには行かないぜ。」

海賊船での一件を警戒しているのか、バティスタはすぐには突っ込んでこない。話をする猶予くらいはあるようだ。
カノンがフィリアを促すと、フィリアはぐっとクレメンテを抱く腕に力を入れてバティスタに向き直った。


「バティスタ、もうグレバムに加担するのはやめて! 心から信仰に打ち込んでいた昔のあなたに戻って!!」
「……俺は最初から神様なんて信じちゃいないぜ。」
バティスタは少しの沈黙の後、嘲笑うかのように口角を上げる。その笑みはまるで自嘲のようで、カノンは思わず眉を寄せた。


「グレバム様に着いていたのもいい思いをしたいから。それだけだ。」
「罰当たりな……!」
フィリアはとうとうクレメンテの柄に両手を添え、目を細めてバティスタを見つめた。しかしその細めた目には、薄い膜が張っている。


「神を冒涜することは許しません……!」
「ふん、だからなんだ。グズのフィリアに何が出来る。」
「……ひとつ聞きたい。」
今にも晶術を唱えそうなフィリアを手で制し、ジョニーが声を上げた。
手にはリュートがしっかりと握られている。



「フェイトは無事なんだろうな。」
「……あいつか。この先の牢屋に閉じ込めてあるぜ。」
「そうか。安心したぜ……これで心置きなく葬送曲を奏でられる。」
ジョニーの翡翠色の双眸が鋭くバティスタを捉えた。それに合わせて各々も得物を構える。


「……待った!」
「アリア…?」
「本当に、あんたはそれでいいのか?」

「……敵の心配してる場合かよ。」
しかし、アリアが待ったをかけた。リオンの訝しげな声にも返事をする余裕はないが、じっとバティスタを見る赤い目には心配そうな光が浮かんでいる。
それを見たバティスタはすぐに視線を逸らし、駆け出してきた。




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