Disapper tear

 枝垂れ桜





《さあ、挑戦者の入場だ! マイティ・コングマンに挑戦する、命知らずが現れたぞ!》
「暑苦しーっつーか…ムサいな…」
《それでは只今より、本日の特別試合を行います!》
「馬鹿みたいだわ。」
「言えてるー…」
響き渡るアナウンスの中、アリアが苦笑した。ルーティが溜め息をつく。


話は数分前に遡る。
アイスキャンディーを買いに行ったスタンたちは、アイスキャンディー屋の前で子供にアイスキャンディーをご馳走している女性に出会った。
その女性こそがオベロン社ノイシュタット支部の責任者、イレーヌ・レンブラントである。

しかしそのイレーヌの行動を批判した男がいた。その男はノイシュタットの闘技場のチャンピオン、マイティ・コングマン。
彼がオベロン社を快く思っていないのはアリアも知っていた。故に彼の言動を批判するような真似はするまいと聞き流していたのだが、そこをスタンが出て行ってしまう。

いさかいを起こすのは良くないとスタンを止めようとしたフィリアだったが、彼女にも予測できないことが起きた。
なんとフィリアにコングマンが一目惚れしたというのだ。スタンに好意を寄せているフィリアとしては、非常に迷惑極まりないことだっただろう。

困惑するフィリアが嫌がっていると勘違いしたスタンと、恋を阻む障害に怒りを露わにするコングマンとが決闘することになった。

リオンやカノンがいればなんとでも回避できたであろう事態に、アリアは眉間を押さえるしかなかった。



《チャンピオン・コングマン! VS! ミスター・トンガリ頭!》


ゴングが鳴った。スタンとコングマンが打ち合い、火花が散る。
スタンが爆発力を込めたディムロスを振るい、爆風を起こせば、コングマンはひょいと跳び上がり、尻でアタック攻撃を仕掛けた。
スタンもギリギリでかわし、空中で回転斬りをしてみせる。


「わたしは見ていて楽しいぞ?」
「スタンさん…大丈夫でしょうか…」
楽しそうなマリーと心配そうなフィリアの声だ。
闘技場で剣と拳を交わすスタンとコングマンに対するコメントは、両者違うものらしい。
アリアは思う。フィリアを心配するんなら彼女にこんな顔をさせるんじゃない、と。

(コングマンはともかく、スタンはフィリアのこと少しは知ってるんだから、こういうことをフィリアが嫌がるのもわかるでしょーに……)
そうこうしてる内にスタンは連携に入った。
最初に斬りつけ、次から技を繰り出すつもりなのだろう、構えを変える。

「虎牙破斬! 爆炎剣!!」
最後まで見事に連携が決まるとコングマンは地に伏した。


《おーっと、番狂わせが起きたぁ! 勝ったのは挑戦者だー!》
アナウンスがスタンの勝利を告げれば、コングマンは苦しいながらも起き上がる。スタンはディムロスを鞘に納めるとコングマンに何かを注意した。
しかし笑顔になったスタンは握手を求めたのだろう、片手を差し出した。それをコングマンはしっかりと握る。


《おぉーっと? 二人の間に友情が芽生えたかー!? 何と暑苦しくも感動的な光景だー!》
そこで歓声が大きくなると同時に、闘技場の入り口から小柄な影が飛び込んで来た。



「こんな所で何をやっている!」
「リオン? もう試合は終わったよ。」
「この馬鹿者が!」
スタンがのんびりと返すとリオンは厳しくスタンを一喝する。
不機嫌丸出しでリオンは場外を指差すと彼にしては少し焦った様子で続けた。


「遊んでいる場合か! 街がモンスターに襲われているぞ!!」
「「!!」」
「アリアさん!」
「リオン!! 俺、先に行って数減らしとくから!」

瞬時に最悪の状況が考えられたアリアはフィリアの制止を振り切って、誰よりも早く闘技場を出て行った。



 


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