Disapper tear

 彼と彼女のゴシップトーク




「アリア、」
「なに、ルーティ?」
「あんたってどれくらい稼いでるの?」
「は?」
アリアは間抜けにも口を開けたまま固まってしまった。


聞き込みに行った結果『ひと月前にカルバレイスへ大きな石の神像を運んだ』という情報を得た。
荷の先を帆柱にぶつけそうになった友人が即刻クビになったのだ、という水夫たちの言葉を思い出す。その石の神像とは傷つけてはいけないもの――間違いなく神の眼に違いないだろう。

その聞き込みの後ルーティが何故か怒っている、とスタンが脅えていた。それは情報をくれた水夫の隣に居た、別の水夫にセクハラされたのが原因だろう。
なんだかんだ言ってもルーティは可愛い少女の部類に入るのだ、女性に飢えている水夫たちがちょっかいを出したい気持ちも分からなくはない。
余談だがアリアもその水夫に腕を掴まれ、腰を掴まれかけた。
即座に剣の柄に手を伸ばし、眼光鋭く睨みつけてやった。アリアは弱い立場の女性にそういった行為を働くのが許せない性質だ。
ついでに自身の肩書きも教えてやってちょっと脅してやったから、もう二度と手を出してくることはないだろう。

本題に戻るが、カルバレイスに行くには魔の暗礁を通らなければならないと水夫たちは船を出すのに難色を示した。
見兼ねたリオンが王に勅命状を貰いに行き、船を出してもらうことにしたのだが……彼が戻ってくるまでやることのない一行は港をぶらついているのである。



そして冒頭に戻る。
アリアの顔を見てルーティは上機嫌だ。何故そんなことを聞くのかアリアには見当もつかない。
そう思っていると彼女はにやにやとしたいやらしい笑い(お金の話をするときのルーティの顔だ)を見せてアリアに擦り寄った。

「だって客員剣士って王に信頼されてるんでしょ? だったら相当儲かるんじゃないかなって思って。」
「…んー……そうだなぁ…そんなに儲かるって感じでもないけど。」
「ウソ!? だって有名なのよ、ダリルシェイドにいる客員剣士の中には貧民街に私財を援助してる男がいるって!!」
そんなこと、よっぽど儲からないと出来るわけないじゃない!
興奮したのかルーティが頬を染める。余程玉の輿に乗りたいのだろうか、それとも儲けるための術を知りたいのだろうか。

「あー……あいつかぁ…」
「なに!? 知り合いなのアリア!?」
残念ながらその人物に心当たりのあるアリアは小さく声を漏らした。
ルーティが素早くアリアの眼前まで迫る。その様子はさながら般若のようだとスタンが震え、マリーとフィリアは興味深そうにこちらを見ていたのだった。


「知り合いというか、友達というか……」
「どんな方なんですか?」
言い淀んだアリアにフィリアが尋ねる。
ルーティはともかくマリーやフィリアは私財を援助するという行いをしている人物に興味があるのだろう。
特にフィリアは瞳を輝かせて両手を胸の前で組み、にこやかな笑顔だ。

「んーとね……すっごい美人で綺麗なひと。」
「え、男なんでしょ?」
「うん。でも俺にはそう見えるし。」
「……」
ルーティの声に満面の笑顔で頷く。
自分でもそう思ったのだ、笑顔を向けられたルーティはもっと驚いているんだろう。


「その人は今どこにいるんだ?」
「今はカルバレイスにいるんだったかな。」
「随分遠いところにいるんだな。」
マリーの声にアリアは笑顔で答えた。アリアの言葉にマリーはきょとりと目を見開く。

「まあ、任務ってそんなもんだし…。」
「大変なんですわね……」
フィリアが不安げな表情を浮かべて眉を下げた。そんなフィリアの後ろで、スタンが嬉々とした笑顔を浮かべる。


「そしたらカルバレイスで会えるかもしれないな!」
「あ、そうだね。…元気かなぁ……」

海の青を見ると、彼を思い出す。
書状を持ったリオンが歩いてきたのを見て、アリアははためく船の帆を見上げた。

向かうのはカルバレイス。乾燥した砂漠の、灼熱の地だ。





prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -