Disapper tear

 赤い実を選り分け巡り会う





「あ! アリアー!!」
間抜けにもスタンが自分の名前を呼ぶ。
彼と同じ席に座っていた女性たちもこちらを向いてアリアを見た。


「へぇ……」
テーブルに近付くと、黒髪の女性にまじまじと観察されてしまう。
先程も感じたような居心地の悪さから逃げるように、アリアは運ばれてきたミルクを啜った。


「あたしルーティ。ルーティ・カトレット。ま、よろしく。」
「どうも……」
値踏みするような視線に慣れていないアリアは、気の強そうな彼女の手を恐る恐る握る。
ルーティの視線は先程から変わらない。自己紹介をする気にもならなかった。


「こっちがマリー。」
「マリー・エージェントだ。」
「アリア、です。」
「よろしくな、アリア。」
「う、うん……よろしく…」
ルーティが明るい笑顔を見せ、後ろにいた女性を示す。長い赤毛をひとつにまとめた女性はほんわりと効果音のつきそうな笑顔を向けた。
そんな彼女の雰囲気に流されそうになってしまうのを必死に堪えて、アリアはスタンに向き直る。

「ちょっとスタン、なんで連れが増えてんの?」
「俺通行証なくて困ってたんだ。そしたらマリーさんと会って、ルーティを助けたんだ。」
「それとこれとどういう繋がりがあるのさ。」
「マリーさん、通行証持ってるっていうから。」

そこからスタンの説明が始まった。まとめるとこうだ。

スタンは通行証の存在をどこかで知った、そしてそれがないために困っていた。
そして通行証を持っているマリーに出会った。マリーは人手が足りなくて困っていたという。
聞けば仲間(ルーティ)が罠にかかっていて助けるためにはどうしてももう一人の手が必要だったと。

スタンの手を借りてマリーはルーティを助けた。その結果通行証を持っているルーティたちと行動を共にすることになったというわけだ。


「……罠に引っ掛かるって…だっさ…」
「うっさいわね! 引っかかったもんは仕方ないじゃない!!」
アリアの感想に、ルーティは顔を赤くしてそっぽを向く。
そんなルーティの腰に下がっていた剣の装飾がぴかりと光った。


『こんにちは、アリアさん。』
「!?」
その光と同時に、落ち着いた女性の声色が脳内に響く。
目を見開いたアリアに、ルーティが驚いたような顔をした。

「あんたにも聞こえるんだ……アトワイト、」
『初めまして。』
「はじめまして。こんちは、アトワイト。」
アトワイトのコアクリスタルに向かって笑顔を向けたアリアは、ふとあることに気付いて肩をすくめた。


「ルーティはソーディアンマスターのくせして罠に引っ掛かったのかよ…」
『それについてはフォローのしようがないわね。』
「アトワイト……!」
『スタンも引っかかっていたがな。』
「おいディムロス!」
『本当のことだ。』
結局罠にかからなかったのはソーディアンを持っていないマリーだけだったようだ。
その張本人のマリーを見れば「わたしには聞こえないが楽しそうだな」と満面の笑顔を返された。
アリアがだっさ、と小さく呟くとマスター二人は黙り込むのだった。





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