Disapper tear

 海月はまどろむ



 

『ディムロスも素直じゃないなぁ。』
『熱血仕事馬鹿。暑苦しーんだっての。』
去っていくディムロスの気配を感じ取ったのか、カノンの腰に下がっているアークが不満げに声を上げた。


「カノンはこれから何かするのか?」
「僕? うーん……なんか休暇を貰っちゃったから、旅したところをもう一回回ってこようかなって思ってたんだ。」
「そうなのか?」
「そーだよ。」

きょとりと目を瞬かせるスタンに、アリアが返した。
彼は、アリアとリオンに回ってきた書類と同じ量の仕事を、バルックの元へ出発する前に終わらせてしまったという。

そして今日書類を引き取りに行ったところ、「もうカノン様の仕事無いです!王から休暇出てますから仕事出来たころに帰ってきてください!」と言われてしまったそうな。



「カノン、すっごいなぁ!!」
「そんなことないよ。暇だったから終わったんだ。」

それを説明すると、スタンは感嘆の声を上げ、尊敬のまなざしでカノンを見た。それに苦笑するカノン。

誰がどう見てもスタンはカノンに惚れている。
カノンがそれに気付いているのかどうかは分からないが。ああ見えてカノンは鈍感であるとアリアは推測する。




「あ、そうだ! カノン、最後に俺のところに来いよ!! すっごくいい村だぞ!」
「そうだね、お邪魔しようかな。」
「アークもな!」
『……ま、お前は嫌いじゃないし…行ってやってもいいけどな。』
「おう!」
「…じゃ、僕はこれで。またね。」

そう言い残し、カノンは市街地に消えていく。
それを名残惜しそうに見届けるスタンから桃色の空気が出ていて、アリアは寒気がした。





「ったく、好きなら早く告れば?」
「え!? えぇぇぇ!?」
「なに驚いてんのさ。周知の事実だよ、それ。」
「うそ!?」
「俺がスタンに嘘ついてどーすんの。」
「……そうか…ばれてたのか…」
「そうだよ。」
「って言うか、アリアはどうするんだ?」
「さっきの聞いてたでしょ。俺はこれから相棒が帰ってくるまでヒューゴ邸に缶詰めで書類整理だよーだ。」
「あ、そうか……」
「でも、気が向いたら遊びに行くよ。書類、終わればだけど。」
「うん! ぜひ来てくれよ!!」

とんとんと進む会話。
それに寂しさを感じたのは、きっとスタンが良い奴だからだとアリアは思う。
いつでも自分の感情に素直で、そして誰かの感情にも素直なスタンの近くがとても安心したためだろう。



「んじゃーね。俺さっそく書類に取りかからないと、本気でやばいから。」
「ああ! アリア、またな!!」

だからこそ、また会えたらいいと思っている。
スタンの声に振り返って手を振った。純粋な笑顔が返ってきたのを見ると、アリアは歩き出す。

ヒューゴ邸にある、書類に取りかかるために。



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