Disapper tear

 全てが終わり、回り出す




しかし。

「がはぁああ!」

神の眼のエネルギーは急速にグレバムへと流れ込んだ。それを人の身で受け切れるわけもなく、グレバムは崩れ落ちるように床へと倒れる。


『愚か者め、こうなることは見えておった。』
「ふん、最後は自滅したか。」
クレメンテの声に、リオンが鼻を鳴らす。くだらない、彼の目はそう語っていた。
一行の誰もがほっと息をついて神の眼を見る。神の眼の光は静かな物へと戻っていた。

「神の眼……名前の通り神様の眼のように強いエネルギーを秘めてるってことかな。人間には扱えなくて当然だ。」
「神ぃ? 相棒って神様信じてんの?」
「まぁ、ね。」
小さくぼやいたカノンの声に、アリアが目を見開いた。それに曖昧な返答を返し、カノンは笑顔で疑問を封殺する。
とにもかくにも文字通り神の眼は、人には扱えぬ代物だということだ。



「神の眼の輝きが、収まりましたわ…」
「ふう、どうなる事かと思ったわ。」
隣ではフィリアとルーティが神の眼を見ながら溜め息をつく。その横を擦り抜けて、ウッドロウがグレバムの落としたイクティノスを拾い上げた。
しかしすぐにウッドロウの表情が凍りつく。


「イクティノス、どうした?」

その声にその場の全員がウッドロウを振り返った。


『なぜ黙っているのだ、返事をせんか!』
『待って。話したくても話せない状態なのではないかしら?』
『さっきのでコアが傷付いちまったのかもな……』
いきり立つディムロスをアトワイトが止めた。続いてアークが小さく声を出す。
その声を聞いたリオンが驚いたように目を見開いた。

「ソーディアンが破損したというのか?」
「なんだって……?」
スタンも空色の目を見開く。


『イクティノス……?』
『イクティノス、おい!』
『なんとか最低限の機能は保っているようじゃが……』
『意思の伝達が全くできなくなっているようね。』

シャルティエの声にも、ディムロスの声にも反応しない彼にクレメンテが渋った声を出した。
アトワイトも困惑しているのだろう、いつもの余裕がない。

『ダメっぽいな。』
『ウッドロウを新たなマスターとして選ぶことは出来るのか?』
『いや、この状態では無理じゃろ。』
アークの声に、ディムロスが返す。それに答えたのはクレメンテだった。



「ダメか……」
「せっかくグレバムの手から取り戻したのに……」
ウッドロウが肩を落とす。
それにスタンが眉を下げて、呟いた。隣ではリオンがシャルティエを見る。

「治せる見込みはないのか?」
『専用の設備が必要になります。残念ながら今の時代には現存しません。』
『イクティノス……』

シャルティエの返答にそうか、とだけリオンが返す。
アトワイトがぽつりとイクティノスを呼んだ。しかしそれにも返答はない。


「取り戻せただけでも良しとしよう。ソーディアンの諸君、感謝する。」
『我らは我らの職分を全うしたのみ。礼を言われる筋合いはない。』
『熱血仕事馬鹿。』
「まあまあアーク……」

ウッドロウがかぶりを振ってイクティノスを収めた。
ディムロスの返答にアークが小さくぼやく。熱血、というよりもディムロスが嫌いなのだろうか。
白けた声を出したアークに、カノンが上品に笑みを零した。


「それにしてもこの神の眼…ものすごい光だったな。」
そんなやりとりを横目に、スタンが神の眼を見上げる。


「まるで飲み込まれそうでしたわ。」
「怖かったです……」
顔を青くして神の眼を思い出すフィリアとチェルシーを見て、ルーティが肩をすくめた。

「正直、これがレンズの一種だなんて信じられないわ…まがまがしくて。」
溜め息をついたルーティは小さく、砕いて売ったらいくらになるのかしらとぼやく。



「結局は、奴の思惑通りか……さぞ満足だろうな、リオンよ。」
「思惑だと……? 誰のだ?」

グレバムはそばにいたリオンを見、そして嘲笑を漏らした。
それは自分自身に対してなのか、それともリオンになのかは本人しか分からない。

眉を寄せて目を見開いたリオンはグレバムを睨む。


「くくく……なるほどな…。所詮は貴様も、私と同じか。」
「お前、なんの話をしている?」
「己が駒に過ぎないことを、自覚していない奴は幸せだな。」
「グレバム! おい! ……ちっ、息絶えたか。」
「……?」

グレバムを揺するリオンだったが、言いたいことを言ってグレバムは事切れた。
リオンの様子にアリアが気付くが、さほど気にせずにチェルシーとの会話に華を咲かせている。


「神の眼の今後の取り扱いだが……セインガルドへ持ち帰る気かね?」
「…それが僕たちの使命だからな。グレバムの乗ってきた飛行竜で運ぶつもりだ。」
「私も同行するか……神の眼のことはセインガルドだけに任せるわけにもいかないからな…」

ウッドロウの声にリオンが頷いて、飛行竜を見る。ウッドロウも同じくそちらに視線を向けて小さく溜め息をついた。



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