Disapper tear

 朧に輝く月光は




「いた!」
前方を走っていたスタンが声を上げる。前を見れば、白い雪の中に青色と桃色があった。

「……!」
少女が倒れ、青年がそれを支える。背後に迫る冷酷な刃。
カノンの背筋を、ぞくりと何かが這い上がった。
「……っ、させない…!」



「──光よ、」
「カノン?」
キュイン、
晶力が瞬時にカノンの手元──アークのコアクリスタルに集まった。
スタンが驚いたような声を上げる。


「フォトン!」
弾けるように光が炸裂し、青年に今にも斬りかからんとしていた兵士は血を吐いて倒れた。
それを皮切りに兵士たちはこちらに攻撃を仕掛けてくる。

スタンとマリーが前線へ出る。
マリーは右から来た兵士に足払いをお見舞いし、左の兵士の鎧を斧で砕いた。


「剛雷剣!」
「マリー、離れろ!」
一度距離を取って、間合いを調節する。
誘われてきた兵士を一蹴したマリーをリオンが呼んだ。素直に下がったマリーの代わりに、リオンが晶力を高める。
闇の晶力を左手に集中し、掴む。


「デモンズランス!!」
投げられた闇の槍は、兵士の鎧を簡単に砕いた。そのリオンの後ろから、カノンは飛び出す。

青年の背後にいた敵の鎧、その繋ぎ目に刃を突き立て斬り捨てる。
青年を守って思うように戦えなかったスタンを見ると、彼は眉を下げて笑った。


「カノン、ありがとな!」
そのまま走り去り、スタンはコアクリスタルに晶力を集める。
スタンを囲む兵士を強い眼差しで見た彼は、炎を纏ったディムロスを振るった。

「爆炎剣!」
放たれた炎に鎧を焼かれ、兵たちは雪の中に倒れこむ。ごろごろと転がっていたが、やがて動かなくなった。
気絶したにしろ、死んだにしろ、ここは青年と少女を連れて退散したほうがいいだろう。

(とりあえずは安心かな。)
胸中で息をついた。
スノーフリアに行けば万が一この兵たちが襲ってきても、晶術に長けたフィリア、回復役のルーティと強力な前衛であるアリアがいる。
そう結論付けたカノンはアークを鞘に納め、少女の肩と膝を掬った。
少女を覗き込めば、目の焦点は合わずぼーっとしていて今にも寝てしまいそうだ。こんな雪の中で眠ってしまったら、間違いなく命を落とすだろう。

「──癒しの月光、優しき救済をここに…」
しかし青年の腹部に大きな切り傷を見つけ、カノンは膝を折る。
すぐに晶術を唱えて、目を閉じた。


「──キュア…」
「ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。」
光が青年を包む。
彼の腹部の傷は塞がったようだ。出血が止まっている。

「痛みはありますか?」
「もう大丈夫だよ。」
「そう……よかった…。」
青年は、息をついたカノンを見てにこりと微笑んだ。
しかしすぐに心配の色を浮かべて、カノンの腕の中にいる少女を見る。


「大丈夫ですよ、ウッドロウさん!」
「スタン君……? なぜここに…」
「それよりもここから撤退するぞ。話はスノーフリアでしろ。」
声をかけたスタンに、目を丸くした青年――ウッドロウ。
しかしスタンが口を開く前にリオンが首を振った。彼の意見は正しいので、スタンもそれに従う。

「スタン、君は彼を支えてくれる?」
「うん! わかった!!」
頷いたスタンはすぐにウッドロウの肩を支える。それを確認すると、カノンは少女を抱え直して歩き出した。




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