Disapper tear

 朧に輝く月光は





「そこにいるのは、前にウッドロウが拾って来た坊主か?」
「アルバ先生じゃないですか!」
アリアがルーティとフィリアを連れて装備屋へと向かった後、一人の老人がスタンに声をかけてきた。
スタンはその老人を認めると、表情を明るくして駆け寄って行く。



「お久しぶりです! いやー、奇遇だなぁ!!」
「……。」
にこにこと笑顔で老人と話をするスタンに、リオンが訝しげな視線を向ける。
老人とスタンの関係を怪しんでいるのだろう。それに気付いたスタンはくるりと振り向いた。


「前にファンダリアに落ちた時、お世話になったんだよ。」
そういえばスタンは飛行竜に密航し、アリアと出会ったということを思い出した。
飛行竜が墜落したという知らせはカノンも受けていたので、その際ファンダリアに落ちたことを言っているのだろう。

「どうしてここに?」
「詳しい話は後じゃ、ウッドロウとチェルシーを助けてくれんか?」
老人の顔色から、一大事だということが分かった。

「ウッドロウ……?」
リオンが小さく呟く。老人の口にした名前に聞き覚えがあったのだろう。
確かにカノンにも聞き覚えのある名前だった。
しかしスタンは気付いていないようだし、マリーはいつもよりぼーっとしていて話の内容をわかっていないらしい。
唯一話のわかりそうな人物は今装備品屋だ。



「助けに行こう! いいだろ、リオン!」
「……わかった。」
「あやつらは途中の森の中じゃ。どうか頼むぞ。」
眉を下げて言ったスタンに、リオンも頷く。こちらにも視線を向けた彼に首肯し、口元を上げた。

「仲間がいる。すぐに戻ってくるからここで待っているように伝えてくれないか。」
「わかった、任せるのじゃ。」
リオンが老人を呼びとめる。手短に言われた声に老人は頷いてくれた。

それを確認してカノンは走り出す。
振り返りはしなかった。




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