leprotto

■ 軋む心


開いたドア。
そこに立っていたのは茶髪の少年・ボンゴレ十代目とアルコバレーノ、それと毒サソリと呼ばれる女性だった。
星の王子は骸に操られ、毒サソリをその三叉槍で突き刺してしまう。

しかし、ボンゴレはマインドコントロールを解くための鍵を握る“最も望むこと”を言い当てた。証拠にボンゴレを刺そうとしていた星の王子はぴたりと動きを止めている。


「ツナ兄……」
「フゥ太!?おい!!」

じわりと涙を浮かべた星の王子は力なくボンゴレへと倒れこんだ。その際に鼻から出血し始め、倒れた後は耳からも出血が始まる。
彼の顔色は真っ青で、ここに連れて来られた時より手足も痩せていた。

「君が余計なことをするから……彼、クラッシュしちゃったみたいですね。」
「そんな!ああ……耳からも!!」

その痛々しい姿を見て和泉はギシリと胸が軋むのを感じたが、気付かないふりをする。
それは自分の矛盾に気付きたくないからこその行動だったのだが、それに気付いた骸は眉を寄せた。しかし、その表情は微笑みの中に紛れ込ませてうやむやにする。


「彼はこの10日間ほとんど眠っていないようでしたしね……思えば最初から手のかかる子でした。ねぇ、和泉?」
「は、い…」
「説明してあげましょうか。彼にも理解出来るように、ね。」

そう言った骸に肯定の意で頷いて見せると、警戒した表情のボンゴレが不安げに見上げて来た。星の王子の様子を気に掛けながら、俯く。
ボンゴレの瞳を直視しないように、だ。




「……私たちは貴方の所在の大体の目星をつけて来たのは良かったけれど、特定には至らなかった。」


綺麗過ぎるのだ。彼の茶色の双眸は。(見てはいけない。)


「そこで貴方と顔見知りだと噂のある星の王子に来ていただきました。」

自分の醜さが、分かってしまうくらいに。(自分の矛盾と卑しさに、気が付いてしまうから。)





「……けれど彼は“沈黙の掟(オメルタ)”を貫き通して、口を閉ざしたままだったんです。」
「更には心を閉ざしてランキング能力まで失ってしまった。」
「なんだって!?」

骸の補足に、ボンゴレは目を見開いた。その目はただただ純粋に星の王子を心配していて、不安げに揺れている。


「それでお前らは仕方なく、以前作られた並盛のケンカランキングを使ってツナとファミリーをあぶり出そうとしたんだな。」
「………。」
「目論見は大成功でしたよ。現に今、ボンゴレはここに居る。」

にこやかに笑った骸に、ボンゴレは強い意志の篭もった目でこちらを向いた。小さく何かを呟いた彼は静かに骸の名前を呼び、そしてきつく唇を引き結ぶ。



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