leprotto

■ 軋む心


「人を、なんだと思ってるんだよ!!」

切実にそう訴えかけられた骸は、少しも考えることなく微笑む。そして、その笑んだ口元を緩めた。

「おもちゃ……ですかね?」
「ふざけんな!!」
「っ……!」
骸の言葉に激昂したボンゴレは、鞭を手に突進する。あれで攻撃されるのはおそらく自分の主だろう。
針を構えようとすると、やんわりと手を掴まれた。……骸だ。

彼はにこやかに笑んで、和泉の手を握る。手を出すな、と言いたいのだろう。
黙って針を持った手を下ろすと、彼は微笑んで頭を撫でた。


向かって来るボンゴレを見て、骸は棒を手にした。右目の数字が“六”から“四”に変わる。
瞬間、骸は凄まじい速さですれ違ったボンゴレに攻撃を加えた。種が分かっている和泉ですら姿を目で追うのがやっとなのだ、骸の能力も身体能力の高さもまだ知らないボンゴレには見えていないだろう。
証拠に彼は小さな声を漏らした。おそらく何が起こったのか理解出来ていないのだ。

一拍置いてボンゴレの体に最初の一太刀が入ると、それを皮切りに骸の浴びせた攻撃が次々に現れる。悲鳴を上げてその場に座り込んだボンゴレは、目に薄らと膜さえ張っていた。

「何がどうなってんの……?」
「すれ違いざまに凄まじい攻撃を浴びせたんだぞ。」
「…流石はアルコバレーノ。その通りです。」

星の王子の傍に落ちていた三叉槍を取り、棒の先に繋げながら骸は笑う。その右目には彼の憎悪を形にしたかのような、ゆらゆらと蠢く湯気のようなものが宿っていた。
それに気付いたボンゴレがその湯気のようなものを『死ぬ気の炎』と呼ぶ。

「死ぬ気の炎…」
「ほう、見えますか?これが見えたのは和泉以外で君が初めてですよ。…ねえ、和泉。」

その言葉を反芻すれば、骸はこちらを振り返った。肯定の意を込めて頷けば、彼は満足そうに笑む。


「このオーラこそ、修羅道で身につけた格闘能力の闘気。」
ボンゴレに微笑みかけた骸の表情は、普段和泉に向けているものと全く変わらなかった。
骸は困惑しているボンゴレに……というよりも彼の後ろに居るアルコバレーノに視線を合わせる。



「六道輪廻という言葉をご存知ですか?」
「人は死ぬと生まれ変わって地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道のいずれかに行くというやつだな。」
「僕の体には前世に六道すべての冥界を廻った記憶が刻まれていましてね。6つの冥界から6つの戦闘能力を授かった。」

ゆるりと口元を緩め、骸は笑う。彼の表情に喜怒哀楽なんていうものは存在しない。
ただ、笑うだけだ。
それを見たのか、発言内容に対してなのか、アルコバレーノは眉を寄せた。

「それが本当なら、オメーはバケモンだな。」
「……君に言われたくありませんよ。呪われた赤ん坊アルコバレーノ。」
目を細めた骸の顔は一瞬、背筋も凍るような冷たさを孕んでいた。それを感じ取ったのかボンゴレの顔からは色が失われ始める。




「さあ、次の能力をお見せしましょう。」




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