leprotto

■ 鳴る踵


「いよいよ僕の出番ですか。」

隣にいた髑髏が口角を上げて美しく微笑んだ。
和泉はそんな彼女(本当は彼なのだが)を見て手の中にあるボンゴレリングを握り締める。

校舎の下は、沢田綱吉たちとヴァリアーと呼ばれる独立暗殺部隊とが揃っていた。

先程、雨の守護者の勝敗が決し、敗北したヴァリアーの守護者――スクアーロは自ら水中へ身を投げ……おそらく生きてはいまい。
その様子を見ていたヴァリアーのボス、XANXUSは笑いながら過去を清算できたと言い放った。

「……っ…」
以前雷の守護者の戦いの際も骸たちは見学に来たらしいが、和泉はこの雨の守護者戦が初めてだ。
それがこんな結末になるなんて、思っていなかった。



「和泉、大丈夫?」
「は、い……大丈夫です…。」

心配そうに声をかけてくれた千種に頷いて、和泉はアクアリオンを見る。

あの冷たい水の中に沈んでいった銀髪の剣士は、喜んで人を殺すような人物には見えなかった。
剣に命を捧げ、その剣を君主のために振るう侍のような……そんな印象を受けた。

「………。」
沢田綱吉とは違うが彼もまた、和泉が見てきたマフィアとは違うような気がする。
少なくとも、あの剣士と椅子に座っているXANXUSは違う――…そう感じた。



「和泉、帰りましょう。」

髑髏の体に入った骸が、優しく微笑んでいる。
和泉は一度だけ後ろを振り返った。寂しげな校舎の中に注がれた水は、ゆらゆらと波打つ。



「……はい、骸様。」

あの中に落ちていった誇り高い剣士は、一体どんな気持ちだったのだろう。
怖くなかったのか、寂しくなかったのか、悲しく……なかったのか。

水中に滲む赤は鮮やかに焼きつく。
それを振り払うように和泉は頭を振って歩き出した。

 

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