leprotto

■ 鳴る踵


「……どうかしたんですか?」

買い物に出た二人が帰ってきた。
しかし、犬の様子がおかしいことに気付いた和泉は首を傾げる。

「駄菓子屋の近くでボンゴレに会ったんだよ。」
千種が溜め息をついた。
はい、と手渡された袋を受け取ると、中には和菓子が入っている。
驚いて顔を上げると、千種は頬を染めて視線を逸らした。


「和泉、最近疲れてるみたいだったから……」
「…ありがとう、千種。」
「いいよ別に……。」

嬉しくなってにやついてしまう。それほど嬉しかったのだ、仕方ない。
改めて礼を言って千種と別れる。和泉は犬の座っているソファに腰かけた。

犬は一瞬反応したが、別段嫌がらなかったので座ってもいいのだろう。


「犬、何かあったんですか?」
「……ボンゴレに会った。アルコバレーノもいた。」
「はい……それで…?」
「そんで、ボンゴレのやつ…俺たちのこと心配してたんらって。」
「そう…」

確かにあのボンゴレならあり得ることだ。
彼は優しい、そして何より甘い。

だからこそ彼は友人を大切にし、それを守ろうと骸を倒し、そして今ヴァリアーと戦っているのだから。



「意味わかんねぇ。」
「そうですね……」
「和泉もそう思うれすよね?」
「そう、ですね……」

普通の少年として普通の生活を送ってきたボンゴレは、人が死ぬのは嫌なのだろう。

きっと彼は優しい場所で大切に育てられたのだ。
自分よりも人の心配をするような、そんな暖かい家族の元で。


「でもね、犬…」
だから、自分とは程遠い場所にいる彼に和泉は惹かれたのだ。

暖かくて、優しい場所。
幼いころの自分が望んでいたものを持っている彼に。




「私はそんな彼じゃなかったら、この指輪を受け取ろうとは思いませんでした。」


小さな指輪を両手で包んで、和泉は今できる限りの笑顔を向けたのだった。
 

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