leprotto

■ 白む頬



「なぁリボーン。」
「なんだ?」
「この人……。」

綱吉が示したのは、気絶したまま動かない雪宮和泉。声をかけたリボーンは相変わらずのポーカーフェイスで綱吉を見た。


「この人本当はすごく優しいひとのような気がするんだ。骸の本心も、利用されてる事も、山本が言ってたことにも気付いてたんじゃないかな……。」
「……そうだな。」
「あの時だって、自分は俺たちの敵だって言い張って……俺たちが戦うのを躊躇わないようにしてくれたんじゃ…。」

雪宮を見る。
毒蛇に噛まれ、青白い顔で雲雀と戦っていた姿が脳裏に蘇った。

眉を寄せて苦しそうにしている。しかし意識はないようだ。
自分が傷付けてしまった頬の傷は酷く出血している。


「………。」


『どうですか、ボンゴレ。敵とはいえこんな可憐な少女に攻撃が出来ますか?』
『……仲間の体じゃないか。その子は仲間だろ。』
『いいえ、乗っ取っていようがいまいが彼女は僕のものですよ。』

そう言いきった骸に、眉を寄せたのをはっきり覚えている。
そして綱吉は、彼女が何故あんなにも悲しそうだったのか理解したのだ。


――この人は、骸に道具として使われている事に気付いていたんだ……。




「でもそれでも従っていたのは、骸を大切に思っていたから…?」

ふと手首にある噛まれた跡に目が行った。近付いて手を取ってみる。
手は驚くほど細くて、この手のどこに雲雀のトンファーを受け止める力があるのかと思うほど。


「……君は、女の子なんだぞ…。」

綱吉の頭に浮かんでいたのは京子だった。
そう、この目の前にいる少女は京子と同い年で、更に京子と同じ女の子なのだ。

京子は無邪気に笑うのに、この少女は悲しそうに笑う。
京子には友達がたくさんいて一緒に遊びに行ったりするのに、彼女はひとりぼっちで骸に従うのだ。



「なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……。」

獄寺のボムを被弾し、山本の刀から逃れようと動いた彼女の後ろにはフゥ太がいた。
フゥ太がボムに巻き込まれないよう、斬られることのないよう、彼女はフゥ太から離れた場所でわざと斬られたのだ。

雲雀との対戦で裂けた制服からは赤く痛々しい刀傷が覗き、白い腹部は無残にも焼けている。


骸が彼女を乗っ取った際、骸は綱吉の攻撃を防御するまでもなく彼女の腹部に激突させた。

『クフフ……どうしました?まさか超直感では見抜けませんでしたか?』
驚いた綱吉に、雪宮の体にいる骸は笑いかけたのだ。妖艶に笑い、髪をかき上げる様はとても美しかった。
しかし彼女の意識のある時に見た笑顔とは程遠かったのも覚えている。



「汚れちゃってる……。」

小さく呟いた綱吉は、すすで汚れてしまってる雪宮の髪に触れる。
だが、さらさらと指の間を通っていくそれからはとてもいい香りがした。



「……ごめんね。」

綱吉がそう言えば、彼女の白い瞼が小さく震えて持ち上がる。にっこりと微笑んで、彼女は口を開いた。




「……ありがとうございます。」


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