leprotto

■ 駆ける足


「お前が見たのは幻覚だぞ。」
「げっ、幻覚!?」
「クフフフ、やりますね。見破るとはさすがアルコバレーノ……そう、第一の道 地獄道は永遠の悪夢により精神を破壊する能力。」

アルコバレーノの力を借りて地獄道の幻覚を解いたボンゴレに、骸が微笑みかけた。その赤い右目には“一”の数字が刻まれている。

悲鳴を上げたボンゴレはがたがたと震えていて、怯えているのは明らかだ。


「クフフ、しかし君たちの事をしばらく観察させてもらい…二人の関係性が見えてきましたよ。アルコバレーノはボンゴレのお目付け役ってわけですね。」
「ちげーぞ。オレはツナの家庭教師だ。」

骸の考えを否定したアルコバレーノは俯いていた顔を上げ、まっすぐにこちらを見据えた。
その際、和泉は彼の背中で眠っている繭らしきものに気付く。よく見れば可愛らしい顔が付いており、すやすやと寝息を立てていた。

(い……生きてる…?)
じっと凝視してみれば、僅かながら動いているようだ。時折ぴくりと何かに反応して震えている。


「クフフフ……なるほど。それはユニークですね。」
「………。」
「しかし先生は攻撃してこないのですか?僕は二人を相手にしてもいいのですよ。」
「掟だからだ。……ん?」

骸と睨み合っていたアルコバレーノと目が合った。急いで視線を逸らすと、アルコバレーノが微妙な笑みを浮かべる。

その表情に気付いたのか骸が怪訝そうな顔で和泉を見たが、アルコバレーノが言葉を続けたためにすぐに視線は赤ん坊へと戻った。



「……それに、オレがやるまでもなくお前はオレの生徒が倒すからな。」
「な…おい!リボーン!!」
「ほう…それは美しい信頼関係だ。面白い。」
ボンゴレの反論など聞きやしないアルコバレーノの言葉に、骸がぴくりと反応する。
瞳の中に存在する数字が“一”から“三”へと変化した。



「いいでしょう。」
「へ?」

ボンゴレが声を上げるのと同時に大蛇が出現し、彼の周りを埋め尽くす。
腰を抜かして蛇たちから逃れようとするボンゴレは思いついたように目を丸くした。


「あ!これも幻覚なんじゃ……」
「正真正銘の毒蛇ですよ。なんなら証明して見せましょうか?」
「そ、そんな!!…い!?いいよそんなの!」
「第三の道、畜生道の能力は人を死に至らしめる生物の召喚。……さあ遠慮せずに。和泉、」

名を呼ばれて、促される。和泉はボンゴレの前に膝をつくと牙を剥く大蛇の目の前に腕を差し出した。


「……っ!」

刹那、強烈な痛みが腕に走り、毒が回ったためか体が熱を持ち始める。
ボンゴレが目を見開き、和泉の噛まれた腕を真っ青な顔で見た。

「君何やってんのさ!!そんなことしたら……!」
「だ、いじょうぶ……で、す…。私には、毒への抗体がありますから……」
「そういうこと言ってんじゃないって!なんでわざわざ…!!」

肩に触れられ、思わず目を見開く。なぜ彼は敵である和泉を心配しているのだろうか。

「これで分かったでしょう?それは毒蛇で、君の置かれている状況も危険ということに。」
「だからって……!!彼女が噛まれなくてもいいじゃないか!」
「彼女は僕の駒。僕の忠実な、ね。」

微笑む骸に、和泉の胸が軋む。分かっていたことだが、改めて言われるとやはり辛いものがあった。

「さあ、生徒の命の危機ですよ。いいんですか?」
「…あんまり図に乗んなよ、骸。オレは超一流の家庭教師だぞ。」
「…!……骸様!!」

視界の端で骸に向かって飛んでいくものを捉えた和泉は駆け出し、針を取り出してそれを弾き返す。

「伏せてください、十代目!」
「えぇっ!?」

困惑の声を上げながらも体勢を低くしたボンゴレのすぐ傍で爆発が起こる。
ボンゴレの周りにいた蛇たちはすべて吹っ飛んだ。

「ご……獄寺君、ヒバリさん!」
 

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