leprotto

■ 最強の敵は我らがボス!
「……で、こんなに遅れたと。」
「すみませんでした…!」

XANXUSは机に足を上げ、和泉の報告書を放った。
赤い目が、和泉に向けられる。和泉の肩が跳ねた。

「……何か言い訳はあるか?」
「言い訳するつもりはありません。前日にやっておかなかった私のミスです……すみません…。」
和泉が頭を下げると、レヴィが鼻を鳴らす。和泉はそれが分かり、悲しげに俯いた。
……しかしレヴィは和泉の足を見てにやついただけである(すぐにスクアーロに「キモいんだよぉお!」と言われ蹴られた。ちなみにスクアーロの声は濁点付きだった)。


「……内容は悪くねぇ。問題は時間だ。」
「…はい。」
「……次からはもっと早く出しに来るんだな。」
「え…?」

そう言い立ち上がって和泉の頭を乱暴に撫で回すと、XANXUSは部屋を出ていった。



「ゆ……許して、もらえた…?」
「そうみたいねぇ。」
「XANXUSのやつはお前のことを気に入ってるからなぁ…」
スクアーロの言葉に、和泉が目を見開いた。
スクアーロの足にルッスーリアの踵が容赦なく捩じ込まれ、スクアーロは悶絶する(ちなみにルッスーリアは笑顔全開だ)。


「――っ!?」
「え……?」
「なんでもないのよ。あ、そうだわ!和泉ちゃん、ケーキでも食べに行きましょ!!」
「?…はい……でもスクアーロさんは…」
「いいのよー。さあさあ和泉ちゃん!!」

スクアーロを振り返る和泉の肩を押して、ルッスーリアは退室する。



「姫ー。オカマとどこ行くの?」
「ベルフェゴールさん。」
出て来た部屋のある廊下で、ひょっこりと顔を覗かせたのはフランと決着がついたらしいベルフェゴール。
にんまり顔のまま、彼は和泉にくっついた。


「んまぁっベルちゃん!可愛い女の子を捕まえて何言ってるの!?」
「姫の髪さらさらー」
「ちょっとベルちゃん、私はシカト?」
「いー匂いする…」
「いやぁねぇ言ってることがオヤジ臭いわぁ。」
憤慨するルッスーリアなど気にも止めずに、ベルフェゴールは和泉の腰に腕を回す。
彼の髪が首を掠めて、和泉は思わず目を瞑った。



がし。

「……なんか増えたわ。」
「そうみたいですね……」

あはは……と力なく笑う和泉の背中には、カエルの被り物がくっついている。


「カエル……」
「あ、ベルセンパイ。いたんですね。」
「てめ、眼中なしかよ。」

また始まりそうな喧嘩(という名の戦闘)に、和泉は泣きそうになった。
ルッスーリアも電話口で聞いたのだ、和泉の心境は理解出来るだろう。



彼女たちがため息をついたその時。


「うるせぇな、カスども。」
その声と共に、ワイングラスが飛んで来た。見事に二人にぶつかり、二人は目を回してしまう。



「あらん、ボス!」
「ルッスーリア、和泉をよこせ。」
「はいはい。頑張って、ボス!」

そのやりとりを最後まで聞くことなく、和泉の体は宙に浮く。
XANXUSに担がれたと気付いたのは、彼が歩き出してからだった。


「ざ、XANXUSさん…!?」
「黙って担がれてろ。」

和泉がルッスーリアに助けを求めても、頑張ってーと手を振られるばかり。

ようやく降ろしてもらえたのは、XANXUSの執務室だった。
すぐに目の前にケーキを出される。しかも和泉の好きなキャラメルケーキだ。


「あの……。」
「…食いたいんじゃなかったのか。」

和泉の視線はケーキとXANXUSとを行き来していたが、やがてフォークを持った。それを見てXANXUSもワイングラスを傾ける。

一掬いして口に入れたキャラメルケーキは、甘い中に仄かな苦さがあってそれがまた甘さを引き立てていた。



「……美味しい…。」
「…そうか。」

小さく微笑んだ和泉に、XANXUSも小さく笑みを浮かべたのは本人だけの秘密。



「ボス……!和泉…はぁはぁ……」
(あそこで覗いてるやつ、後でかっ消す……!)
そしてそれを盗撮していたレヴィがXANXUSに半殺しにされるまで、後七分。




最強の敵は我らがボス!


(あれ?でもどうして私の好きなケーキ……)
(……。)
(XANXUSさん…あの、)
(うるせぇ、黙って食いやがれ。)
(……ありがとうございます。)
(…勝手に勘違いしてろ、……カスが…。)

 

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