leprotto
■ 崩れる背中
「並中ケンカランキングで5位だったんだよ。犬が担当。」
「ああ……そうだったんですね。」
「あの人は確か……晴の守護者だったよ。」
「晴……」
納得がいったので千種にお礼を言ってから少年――笹川了平を見る。
腕を怪我しているのか、三角巾で腕を固定していた。
しかしそれを感じさせないような明るい笑顔を浮かべている。
「ここは“ネヴァイオ・ヴァスカ”。雪の守護者にはこのフィールドで戦っていただきます。」
「水面に浮いている板はお分かりの通り発泡スチロールです。」
「ですが、特殊な仕掛けが施してあります。」
そこまで言ったチェルベッロは頷き合って、一人がプールに浮いている板へ乗る。そしてすぐに先ほどまでいた場所へ戻った。
直後、チェルベッロが乗っていた板がばきりと音を立てて折れ、水中へ沈んでいく。
それを見た沢田綱吉は顔を真っ青にして、板が沈んでいった水中を見つめていた。
「このように一度乗ると、その板は何らかの変化を起こします。」
「今は折れて使えなくなりましたが、他には電撃が走り乗れなくなる、凍りついて滑るので着地出来ないなど種類は多種多様です。」
「そ、そんな……!」
沢田綱吉が小さい声で呟くと、チェルベッロは彼のほうを向く。
既にヴァリアー側の守護者は出ている。やはりあの漆黒の青年だ。
沢田綱吉の守護者が出ていないので、催促するのだろう。
「それでは、沢田氏側の雪の守護者は前へ。」
それに水を打ったように静かになる一同。
どうやら誰も雪の守護者の正体を知らないようだ。
「うしし!やっぱり不戦勝だねー。」
「……。」
嵐の守護者が沢田綱吉たちを見た。その声に含まれているのは明らかな嘲笑。
しかし沢田綱吉は、不安げだが力強い光を双眸に宿してチェルベッロを見上げた。
「ちょっと待ってくれませんか。きっと……きっと来てくれるはずですから!」
「十代目……。」
「やめとけツナ、あいつはそんな奴じゃねぇ。」
彼の強い言葉に、獄寺隼人が眉を下げる。アルコバレーノが帽子のつばをきゅっと下げて呟くように言った。
「あいつは……危険だ。」
「なんでそんなことわかるんだよ!?」
「………。」
「お気持ちは分かりました。ですがそれは出来ません。」
「規則ですから。」
「やっぱりか……ツナ、やべぇぞ。」
「…うん…。」
黙り込んだアルコバレーノに、沢田綱吉は食ってかかる。しかしそこにチェルベッロが入った。
彼女たちの発言を聞いて、山本武が眉を寄せる。呑気な男だとは思っていたが、さすがにこの状況では呑気になれないらしい。
「なんでそんなにお前信じようとするんだ?」
「なんでって……。」
「相手のことをお前は知らねーだろ。」
アルコバレーノに矛盾を突かれ、沢田綱吉は黙り込んでしまった。
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