leprotto

■ 白む頬


「和泉、」

呼ばれた声に反応して、瞼が動く。薄っすらと開いた目を無理やり開けた。

「ん……」
「起きた?」
「犬…?」

小さく声が漏れた。

目を開けて最初に映ったのは、眉を垂らした心配そうな犬の顔。隣には千種もいるようだった。

起き上がると、腹部に鋭い痛みが走る。


「う…!」
「あ!まだ起きちゃダメらよ!!」
「……っ…!」
「和泉!!しっかりするれす!」
「犬うるさい。和泉、大丈夫?」

声が出せないほどという事は、相当深い傷なのだろう。どこか冷静な頭でそう考えた。
顔を覗き込んできた千種に小さく頷いて、ゆっくり体を起こす。


ここはどこなのだろうか。

「はい……」
「そう…よかった。」
「和泉、ぼーっとしてるれす?」
「夢を、見ました…」
優しい夢を見た。
…あの茶髪の少年が和泉のそばにいて、優しく穏やかな声をかけてくれる夢。

「あ……ここは…」
そこまでぼんやりとしていた和泉の思考は一気に覚醒した。
ここは一体どこなのだろうか。


「ここは黒曜の廃屋だよ。」
和泉の思考を読み取ったかのように声がした。少し太めの声だ。


「君はあの戦いで倒れた後、復讐者に捕まり彼らが脱走してくるまでの間ずっと眠っていたんだ。」
「あなた、は……?」
「ああ、挨拶が遅れたな。俺は――…」

男が近付き言いかけた時、犬が間に入って男を睨む。千種もヨーヨーを取り出して、じっと男を見据えた。
瞬間、千種が得物でガラスを割り、犬が和泉を抱えた。そのまま二人は割れたガラスから外へ出る。



「ふ、二人とも……どこに行くんですか!?」
「知らない。」
「とにかく逃げるびょん!!」
「え…でもあの人は……?」
「あいつマフィアだびょん!」

犬に抱えられたまま、和泉は後ろを振り返った。男は追って来る気配がない。

「……あのひと…。」
(似てる……ボンゴレ十代目に…。)


彼の夢を見たからなのだろうか。
雰囲気も容姿も何もかも違うのに、そんなのことを思ったのは。


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