Short story ∇今日も@錫也 「可愛いよ」 「……」 毎日その言葉を聞いてる気がするけども、何故そんなに可愛いと言いたがるのかわからない。 私の顔面偏差値なんて中の下だし、月子って可愛い幼馴染もいるってのに毎日私に言ってくるのだ。 そりゃぁ一応付き合ってはいるのだから、可愛いなんて言われたら嬉しいけども毎日言われると何が可愛いのかさっぱりわからなくて。 「……毎日毎日可愛いって何が可愛いのよ…」 そう言って溜息を吐いたのがいけなかったのか、日が暮れるまで永遠と私の事を語られた。 すごい恥ずかしかったからもう絶対錫也にこの事は聞かない。 06.14 Wed 01:20:30 ∇時代遅れ「女の子って自分の事お姫様って思いすぎじゃない?」 私がそう言うと隣にいた錫也は驚いた顔をした。 「待ってれば王子様が来ると思ってるんだもん」 「突然何を言うかと思えば…お前も女の子だよ?」 私は違うもんと言うと、錫也は同じだよと言って笑った。 「そんなことないよ。だって、私は待っててあげないもん」 そう言って錫也の唇にキスした。 女の子はみんなさらわれたい生き物だと思うの、時代遅れでつまんない Title by にやり 04.06 Wed 03:33:47 ∇愛なんてあったのだろうか@東月気がつけばいつも一緒にいた。彼女の隣はとても心地よくて、俺は安心できた。でも、彼女との関係はただの友達でそれ以上でもそれ以下でもない。 ただ毎日彼女と過ごしていた。 もう高校も卒業間近で学校もなく、ただ寮で過ごす日々でも彼女と毎日会っていた。ただダラダラと話していただけだったのにそれが楽しくて、また明日ね、と言って毎日別れた。 卒業式の前日、彼女に出かけようと言われて街へと出掛けた。俺は月子と同じ大学へ行くが、彼女はフランスに留学してしまうから、最後の思い出なんて言って出掛けたのだ。 服を見て、パフェを食べて、プラネタリウムに行って、気が付けば日が暮れる時間だった。 「もう日が暮れちゃうのか〜」 「まだ冬だからね…」 いつもよりゆっくりと、時間を惜しむようにバス停へと歩いた。彼女も自然と歩みが遅くなっていて、オレンジ色に染まった海を見ながらただ無言で歩いた。ふと、手が触れ合った時に彼女が俺の手を握ってきて、俺はそれを無意識に握り返していた。自分の行動に驚いて彼女を見たけれど、彼女は嬉しそうな顔をしていてそれだけで全部どうでもよくなった。バス停についても、バスの中でもずっと手を握っていた。 彼女と別れる時、ゆっくりと手を離した。 でも彼女が再び俺の手を握って、顔を上げた。 「……」 「…あのさ、…」 そこまで言って言い止まり、寂しそうな、悔しそうな顔をした。その顔に俺は胸を締め付けられて、我慢できずに彼女を抱き締めていた。 「…と、づき…」 彼女はただそれを受け入れるだけで何も言ってこない。その時間は無限のようにも感じたけれど本当に短い時間だったと思う。 「…あのさ…」 「うん…」 「東月は…わたしの事…」 その続きは強い風が吹いてうまく聞こえなかった。けど、俺はなんて言ったかなんてすぐにわかっていた。俺と同じ気持ちでいることはわかっていたのに、その時何故か素直にそれを言うことはできなかった。 何故言えなかったのかわからない。 「…ごめん、今なんて言った…」 そう言ったところで寮の中から誰かが出て来たので彼女から離れた。彼女はその後は何も言わずに、空を見た。俺も彼女と同じように空を見上げた。 「……」 無言の時間はなぜか心地よくて、ずっとこのままでいたいと思った。彼女もきっとそれを望んでいた。けれど、この時間を終わらせたのは彼女だった。 「…じゃあ、また明日ね…」 空から視線を外し俺と目を合わせて、目に涙を溜めながら彼女はそう言った。俺はただ、あぁ、としか言えなくて、彼女は振り返らずに寮に入っていった。俺はそれを見つめることしかできなくて、彼女がいなくなってからもしばらくそこから動けなかった。 卒業式は何事もなく終わり、彼女とも何もなく別れた。彼女の連絡先は知っていたけれど連絡することもなく気が付けば高校卒業から10年が経ち、28歳になっていた。今はプラネタリウムで学芸員として働いている俺は毎日が充実していて、高校の時のことなど忘れていたのだ。 「錫也久し振り!」 「あぁ、久し振りだな」 久し振りに月子と会うことになり、有給をとって出掛けた。三ヶ月ぶりに会ったものだから話も進み、気が付けば日が暮れ掛けていた。 「わ、もうこんな時間…」 「もう帰ろうか?」 「うん…帰らなきゃ…あ」 帰る準備を始めた時、月子が何か思い出したように鞄から取り出した。それは一枚のハガキだった。月子は、これ錫也に見せなきゃいけないと思って、と言って渡してきた。ハガキには写真がのっていて、そこに写っていたのは彼女と知らない男だった。 「結婚するんだって」 「…そうなんだ…」 酷く喪失感に襲われ、手からハガキが落ちた。月子はそれを拾って、ハガキを見つめた。 「私、二人が仲良かったから…いつか結婚するんじゃないかって思ってたの…」 「…え…?」 月子はポツリポツリと高校の時の話をして、二人とも好きだったのに何も言わずに別れちゃったから…なんて言って寂しそうに笑った。 「別に、好きだったわけじゃないよ…きっと…」 「そうかな…でも、今錫也は後悔してる…でしょう?」 月子はそう言った後電車の時間あるから帰るねと、カフェから出て行ってしまった。月子が言った言葉が忘れられずに、その場から動けなかった。 そう、あの時確かに彼女のことが好きだった。でも、応えられなかった…何故かなんて、彼女の留学のこと、自分のこれからのことについて考えたら全部ダメになっていた。あの時の自分は弱くて、自分の保身のために動いていた。きっと彼女もそうだった。勇気を振り絞って伝えてくれたけれど、二度もそれを言う勇気はなかった。だから俺が聞き返した時に何も言わずに行ってしまったんだ。 「……」 ひとり残されて、そこから動けなくなってしまった。あの時はいらないと思っていたものが今更欲しくなってしまった。でももう、他の人の手に渡ってしまったからどうにもできない。ただ、悔しくて、自分があの時どれ程愚かだったのか今更わかったのだ。 それは愛だった すごい久々に小説を書いたのですが、よくわからなくなってしまいました…。 錫也のつもりでか書いてるけど、あまり錫也っぽくなくてすみせん…。 03.07 Mon 06:42:31 ∇変わりますか@錫也「君は、強いね。」 私と彼しかいない放課後の教室で反響した声に、私は怒りを覚えた。 私の何に、強いというのか。 「なんのこと?」 冷静をよそおいながら、私は行った。 でも、私の声は微かに震えていて情けない。 この一言だけでこんなに揺らいでいるのに何が強いだ。 「月子とあの人を見て何にも思わないのか?辛くないのか?…涙一つ、見せないじゃないか…」 バツが悪そうな顔をして、そう言った。 あの人と、というのは多分一樹会長のことだろう。 私の思い人の事を彼は知っているのだ。 だからって、こんなことを言って言い訳じゃない。 「…私の何を貴方は知ってるの」 「え…?」 ダメだ、言うな。 そう頭の中で自分を制止する声が聞こえるが、一度口に出してしまえば止めることなどできない。 「何もしらないのに、そんなこと言わないで!」 「っ…」 自分の制御が出来なくて、大声で彼に怒鳴りつけてしまう。 こんなことが言いたいわけじゃない。 頭の中は冷静でいても、私自身は冷静になどなれないのだ。 「泣いて、何か変わるの…?」 「…それは…」 彼は何も言えなくなり、俯いて口を閉じた。 結局、何も言えないんだ。 お前はそうなんだと言って、それはハズレなんだ。 「…ほら、何も言えないじゃない…」 「……」 「…何も知らないのに、私の事をわかったように言わないで!」 今泣いてはダメだと思ってもダメだった。 月子と一樹会長の二人はお似合いで、私に入る隙なんてなかった。 だからいまだってここにいるに。 耐え切れず、私の頬に涙が伝った。 自分で泣いたって変わらないと言ったのに泣いてしまった。 ねえ、神様。 あの時こうして泣けていたのなら、この未来は変わったのでしょうか…? 「俺にすればいいのに…」 私がいなくなった教室で東月がそんなこと言っていたなんて、逃げ出した私にはわからなかった。 突然ここだけ書きたくなった。 11.10 Sun 03:40:37 ∇死人に愛なし@錫也好きだった。 いや、今でも好きだ。 彼女の笑った顔を、俺は今でも鮮明に思い出せる。 俺の最愛の彼女は、去年事故でこの世を去った。 人間の終わりなんて、あっさりしたものだ。 必死に騒がしく毎日生きているのに、死ぬ時は静かに、音も立てずに息を引き取るのだ。 彼女も、病院のベットで静かに息を引き取った。 俺は、彼女に死なないで、いなくならないでと言わなかった。 月子や哉太達は泣いて縋ったというのに、俺は遠目にそれをみていただけだ。 最初から、俺は諦めていた。 いや、俺は諦めしかないのだ。 「……」 彼女と過ごしていたこの部屋は、一人になった俺には大きすぎた。 もう少したら、この部屋は引き払うつもりだ。 好きだったのに、愛してたのに、彼女がいなくなった部屋でつぶやく。 なんにもしてないのに、酷く身体が重く、立っているのでさえ億劫だった。 彼女と二人で寝たベットに横になり、白い天井を見上げる。 昼間なのに閉じたカーテンの小さな隙間から入ってくる太陽光が顔にあたり、少し眩しかった。 「……俺は、どうしたらいい…?」 そんなことを言って、返事が返ってくる訳もなかった。 一人取り残された俺は、何をすればいいのか。 好きだった、ただ好きだった。 ぽつり、と彼女の名前を口から零した。 少し反響し、部屋にまた沈黙が訪れる。 今でも、愛してる。 そう呟いて、俺は気づいた。 もう俺は、彼女を愛せない。 涙が、頬を伝った。 彼女を亡くした時にさえ出なかった涙が、止まることなく俺の頬を滴り落ちた。 という中途半端を思いつきました。 Title by 自慰 08.08 Thu 07:16:38 back |