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人生というものは非常に不可解で突然だ。



「…?」




目が覚めたら赤ん坊になっているなんて誰が予想できるだろう。





「ぅ…」





昨日は普通に家に帰宅して、そのままいつも通りの時間に眠りについた筈だ。

もしかして夢?

元の体からしたら想像出来ないほど可愛らしい手で柔らかい頬を引っ掻いてみるが、痛い。地味に痛い。

何かを喋ろうとしてもぶぅだのあぅだの意味の成さない音が出るばかり。

何もできないので数日ありとあらゆる恥に堪え様子を見てみると、どうやら江戸っ子口調の父らしき人と赤髪の美人の母らしき人も居るし、これがもし、もしも本当に夢じゃないんだとすれば、俗に言う転生───すなわち第二の人生って所だろうか…?

小さい名探偵もびっくりするレベルの急展開すぎて正直ついていけない。私死んだの?泣きそう。


























あれから何日も何ヵ月も経ち、とうに元に戻る事は諦めた。

そして元の世界で自分がどうなったのかすらわからないまま何年も過ぎていき、二度目の中学生になった。

こう何年も過ごして戻る気配がないという事は、この世界で生きていくしかないんだろう。人生諦めが肝心だよね。

最初こそ、見た目は子供、頭脳はなんたらってやつで小学校を愛想笑いで適当に過ごしてたけれど、すぐに疲れて愛想笑いをやめ、所謂ぼっちのまま卒業して中学に入学した。
何も刺激のない退屈な毎日はあっという間だった。

精神年齢があまりにも幼い子達に合わせれるほど私は器用な人間じゃなかったらしい。




「桃宮さん、どうしたの?」




でも中学で席が隣になったこの男の子、青山雅也くんとは話してみると中々ウマが合い、仲良くなった。初めてこの世界でできた友人だ。

彼は中1とは思えないほど落ち着いていて絶滅危惧種とか環境問題とか私でも頭を捻るような小難しい話に関心があって尊敬している。絶対青山くんも転生してるだろ。

しかも顔が良い……こりゃモテるだろうなって思ってたら案の定数日もしないうちにこの学校の王子様になっていた。
石投げないで、ただの友達だから。




「あの、これ…」

「レッドデータアニマルズ展?」

「うん、青山くんそういうの好きだよね?もしよかったら一緒に行こうよ」



この前過保護な父から貰った展覧会のチケット。
父は女友達と行けよと言っていたが、生憎お友達なんてろくにいない私が誘えるのは青山くんしか居ない。

それにレッドデータアニマルなら青山くんも喜ぶし一石二鳥だなって…別に他意はないけど、友達を遊びに誘うなんて前世ぶりだから若干緊張しながらチケットを見せる。


チラリと青山くんの顔を伺うと彼は柔らかく微笑んで口を開いた。



「いいよ、10時に駅で待ってる」





その後は言うまでもなく喜びでスキップしそうな勢いで帰ってきた。久しぶりに年頃()の女の子らしい事をした気がする。

初めて友達と遊びに行く事に胸を弾ませ、その日は眠りについた。





(始まり)

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