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▼ 橙色に輝く

_地中海沿岸のとある港町にひっそりと位置するバーは、訳ありの客、いわゆる裏稼業を職業とする者たちの溜まり場である。

 そのため、この街に集まるのはほとんど裏社会で育ってきた者達で、漂う空気もどこかどんやりとしたものだった。

 そんな街を、迷いなく歩く者がいた_黒のボルサリーノをかぶり、全身を黒のスーツでかためて颯爽と歩く姿はたいへん様になる事だろう。ただし、それは大人の姿だったらに限るが。

 彼_いや赤ん坊は、目的地であるバーに辿り着くと、迷いなく扉を開けた。どうやって扉を開けたのか。それを説明するには、この赤ん坊についての説明を1からしないといけないためひとまずおいておく。

 中に入り、赤ん坊は知った顔である男性の隣の席に着く。飲んでいる最中なのだろう、テーブルの上には飲みかけのワイングラスが並んでいた。その男性は、タバコをふっと吹くと、大して驚いた様子もなく「リボーンか、」と話しかけた。

「またオヤジに呼びだされたようだな」

 その赤ん坊の名前は、リボーンと言うらしい。バーに赤ん坊であるリボーンがいるというこの不自然な状況を、その男性はまるでいつもの事だと認めているようだった。

 それは、その男性に限った話ではない。バーの店主も、周りの客も、それがさも当然の事のように振舞っていた。

 別の男性が、リボーンに話かけた。

「人気者はつれーなー。今度はローマか?ベネチアか?」
「日本だ」

 リボーンは、赤ん坊特有の高い声、しかし落ち着いた様子で淡々と答えた。だが、その問いを聞いた男性2人は思わず、といった様子でリボーンに問い返した。

「なに!!オヤジのヤツ、とうとうハラ決めやがったのか!!」
「ああ」

 リボーンは、一瞬俯いた後、赤ん坊には似合わないニヒルな笑みを浮かべ、また答えた。

「長い旅になりそうだ」

 声には愉悦が浮かんでいる。男性2人は、その標的に心の中で合掌した。リボーンとは、2人ともまだ付き合いは短いものの、その鬼畜っぷりは周りから聞いている。

 リボーンは、スーツから依頼書を取り出すとまたニヤリと笑みを浮かべた。

 沢田名前_まだあどけない顔立ちの少女が、リボーンの新しい生徒である。

 母親譲りだという大きな目と、ところどころはねた茶髪の少女の写真の下には、大きな文字で依頼内容が書かれてあった。

_沢田名前を、ボンゴレ]世に相応しいボスに教育するように、と。



 琥珀色のパッチリとした大きな目、ところどころはねた茶髪の少女_沢田名前は途方に暮れていた。彼女が今いる場所は体育館。辺りには先程男子が授業で行っていたのだろう、バスケットボールが至る所に散乱している。

 なんで女子の自分が男子の授業の片付けなんてしないといけないんだ、とぶつぶつ呟きながらもバスケットボールを集める手は止めない。悲しいことに、少女はこの13年間、男子に馬鹿にされいじめられる毎日を送ることで負け犬根性がどっぷりと骨の髄まで染み込んでしまっていた。

 彼女_沢田名前のあだ名はダメ名前である。その名の通り、彼女は何もかもダメダメだった。テストは入学以来毎回赤点、スポーツは彼女のいるチームは必ず負ける。そして特に秀でた特技はない(強いて言うなら、音ゲーが少し人より出来るくらい)。コミュニケーション能力も決して高いとはいえず、そんな彼女は男子からのいじめの格好の的だった。

 だから、今日の体育館の掃除を押し付けられたのも名前にとってはいつもの事で、大してショックも受けていなかった。案外、彼女は打たれ強い。

 それよりも、彼女は楽しみにしていたことがあった。

 ボールをカゴにしまい、モップをかけ始めると外から聞こえる2人分の話し声。

「(来た....!)」

 ピクン、と聞き耳を立て、体育館隅の窓から外を見ると、そこには名前が昔から憧れている少女_笹川京子とその友達の黒川花が談笑しながら歩いてくるところだった。

「(やっぱり、京子ちゃんは今日も可愛いなぁ...)」

 名前はほれぼれと京子を眺めた。少し外にはねたボブカットの髪にパッチリとした二重瞼を持つ京子は、学校のアイドルと周りからも評判で、並中の男子から絶大な人気を誇っていた。

 平凡な容姿で、尚且つ友達もいない名前にとって京子は真反対の存在だった。ほんわかとした雰囲気の京子には、自然と女の子が集まり楽しそうに話をしているのをよく見る。

 それに、

「(1回_覚えていないかもしれないけど助けてくれたし)」

 もう、随分も昔の話。京子にはその気がなかったかもしれないけれど、確かに名前を助けてくれたのだ。

 そんな訳で、名前にとって笹川京子とは昔から憧れの存在である。あわよくば友達になりたいと思っているが、彼女には京子に話しかける勇気など全くない。

 週に何度か、男子から体育館の掃除を押し付けられた時、近くを通りがかる京子の様子を眺めることしか名前には出来なかった。






 ところで、沢田名前にとって、笹川京子が脳内で占める割合は大きい。何をやってもダメダメなため、名前は学校に行くことが好きではない。行ってもどうせ、周囲の男子から馬鹿にされ、雑用を押し付けられるからだ。それでも一応、名前が毎日学校に通えているのは、京子ちゃんを見たいという理由が一番だったりする。

 今日も京子ちゃん可愛かったなあ。特に、無邪気な笑顔はサイコー!

 どんなに学校が辛くても、京子ちゃんの顔を見るだけで幸せになれる。その様子は、ただのクラスートというより、アイドルとそのファンといった方が正しい。それほど、名前にとって笹川京子は憧れの存在なのだ。


 だから、今現在名前が見ていることは、衝撃の一言に尽きる。

「おまたせ、京子」
「(け、剣道部主将?!)」

 現れたのは、剣道部主将を務める2年の持田先輩。爽やかイケメンでカッコイイと、クラスでも話題になっていた。

「それじゃ私行くね、2人のジャマしちゃ悪いし」
「もー、花ったら」

 そんな2人の会話も名前の耳には入ってこない。『京子ちゃんと剣道部主将が付き合っている』という事実とその事実を信じたくない気持ちで頭がパンクしそうだった。

 思わずズルズルと体育館の壁にもたれた。確かに、京子ちゃんは可愛いから彼氏がいたって別におかしくない。むしろいない方がおかしいだろう。でも、でも

「...よりによって、剣道部主将かぁ」

 名前はぼそり、呟いた。もちろん、体育館には名前しかいないためこの呟きを聞いている者もいない。

 だってねぇ、名前は1人ごちる。別に、名前は京子に対して恋愛感情を持っている訳ではない(崇拝はしているが)。だから、彼氏が至って別に構わないのだが、よりによってその相手が剣道部主将。彼だけは、全力で遠慮してほしかった。

 なぜなら、名前は知っている。爽やかイケメンという彼の噂は上辺だけのものだということを。名前は知っている。彼はいつも威張り散らし、人を見下している節があることを。

 いつも男子にパシられている名前だからこそ、持田先輩の本当の姿に気付いていた。

「どーしよ、絶対止めた方がいいよね」

 そんな彼が京子と付き合って上手くいくはずがない。京子が傷つく未来が見えて、思わず身震いした。そんな未来、見たくない。自分を助けてくれた、憧れの存在である京子ちゃんならなおさら。

 でも、

「どーすればいいんだろ、」


 所詮彼女はダメ名前で、助ける勇気なんて出るはずがなかった。



ここまで書いて力尽きました。主人公セコムの獄寺とか京子ちゃんガチ勢の主人公とかめっちゃ書きたかったですが、死ぬ気状態どうするよ、などなど色々思うところがありまして挫折。

とりあえず途中まで立てていた設定だけぶん投げておきます。誰か続き書いてください(投げやり)。きっと愛され傾向、逆ハー成分強めになっていたと思います。あと、めっちゃギャグ路線に突っ込んでいただろうな...


【設定集】
沢田名前
主人公。原作通り勉強も運動もダメダメな女子中学生。男子から馬鹿にされる毎日を送っている。容姿は母の奈々に似ており、琥珀色の大きな目と栗色のくせっ毛を肩まで伸ばしている。日常編まで髪は基本下ろしていたが、黒曜編以降は後ろで1つに束ねている。胸は控えめ。10年後は髪が腰まで伸びており、母似の美人になっているそうだ。胸もちゃんと発育したそうです。
男子に馬鹿にされていたところを一度京子ちゃんに助けてもらい、それ以来京子ちゃんに憧れている。あわよくば友達になりたいと思っているが話しかける勇気がない為まだまともに話したことがない。男子に馬鹿にされまくったため、男性に少し苦手意識がある。母のことは好き、だけど父親のことは嫌い。

原作ではずっとツッコミポジション。それは今作ではあまり変わらないが、京子ちゃん関連の話になると途端にボケにまわり、ツッコミ不在のカオス状態になる。京子ちゃんガチ勢。バレンタインの時は大変だったと、リボーンは遠い目をして語る。普段からねぎらってやってください。

獄寺隼人
主人公のセコムその1。主人公のことは大好き。異性として好きかと聞かれると、それまではよく分からなかったが、ヴァリアー編にて本格的に恋に落ちた。というよりやっと気が付いた。主人公を馬鹿にする人は片っ端からぶっ潰す。主人公のために色々と奮闘しているが、それらが全て空回りしていることに気付いていない。

山本武
主人公の親友でもあり守護者でもある。天然で主人公に抱いている感情にも気付いていなかった。シモン編で多分気付く。主人公のセコムその2。

笹川了平
京子ちゃんのお兄さん。女子だが、強烈なパンチをした主人公をことある事にボクシング部に勧誘している。バレンタインでは、主人公と結託して色々と惨事を引き起こした。

笹川京子
小学校の時、主人公が男子からいじめられているところを助けてからずっと主人公の憧れの人。彼女は主人公とはもうとっくに友達だと思っているが...

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