常に最高の事態を想定せよ


「山本武です!よろしくお願いします!」

_黒板の前で、今まさに自己紹介した転校生を見て、私は思わず声を漏らしそうになった。なぜって、その転校生の顔、声、名前を何回も聞いたことがあるからだ。漫画で、アニメで。

「(いやいやいやいや、いくらなんでもそっくりすぎでしょ)」

 パチパチと、教室内から拍手が湧き上がる。このクラスは文系クラスのため女子の比率が多い。そのため、クラスの数少ない男子たちは、仲間が増えたと嬉しそうだった。一方の女子も、転校生を見て「イケメンだね」と盛り上がっている。

「席は、あの女子の後ろ!あの女子も、山本っていうんだ。同じ山本同士、色々と教えてやれよー」

 そう言って担任はこちらをにこやかに見た。集まる視線、特に女子からの羨ましいという視線が痛い。朝、なぜか後ろに席が増えたと思ったら、こういうことだったのか。

「お、名字一緒なのか!よろしくな!」
「...よろしく、」

 ニカッと笑う彼が眩しくて、声が小さくなってしまうのは許してもらいたい。...本当に、よく似ているな、あのキャラクターに。


 後ろに座った転校生のことを思いながら、勝手にキャラクターと重ねて見てしまった気まずさから、私は椅子に座り直すのだった。
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