夕暮れ時、辺りは橙色に包まれ街を歩く人影もまばらだ。そこに、一人の少年と少女が手を繋いで歩いていた。少年はまだ小学校に上がりたてといった様子だが、少女の背は少年のそれより一回り大きい。兄妹、だろうか。

「恭弥君は、強いね」

 少女は、少年に話しかけた。どうやらその少年の名前は恭弥と言うらしい。少年は美しい黒髪と切れ長の整った目付きをしていたが、頬には大きな絆創膏が貼られてあった。体中擦り傷だらけで目も当てられない。しかし、その少年の足取りはしっかりとしていて堂々としていた。意地でも倒れたくないようだ。少年は、自分より一回りも大きなその少女の言葉に不服そうだった。

「...どこが。こんなにボロボロなのに」
「...恭弥君はさ、どんなに相手が強くても立ち向かっていけるから。私は、出来ないから」

 少女は自嘲するように答えた。少年と繋いでいない方の腕を見る。袖で隠れているものの、少女にとって一生拭いきれないだろう傷が、そこにはあった。

 少年はじっとそんな少女の様子を見つめていたものの、意を決したように口を開いた。

「...僕が、大きくなってもっと強くなったら、なまえと結婚するから」
「えっ、いきなりどうしたの?」
「なんでも」

 だから、僕がなまえのことを守るよ。その言葉はまだ少年の口から直接伝えられそうにはないけれど。

 なまえと呼ばれた少女は、困惑したものの少年のそんな突然の発言には慣れているようだった。笑みを浮かべ、はっきりと少年に答えた。

「じゃあ、恭弥君が忘れないでいてくれたらお願いしようかな」
「約束?」
「うん、約束」





約束だよって小指を絡めた



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